男の痰壺

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明日の食卓

★★★★  2021年6月7日(月) シネリーブル梅田3

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3つの子育てにからむ挿話が並行して語られるのだが、ほとんど連関しない。それは構わないのだが、連関させる構造の尾っぽが微妙に残っているのはどうなんやろう。

終盤で唐突に出てくる子殺しの主婦が菅野美穂ママの育児ブログを見ていたと拘置所の接見室で吐露する件からして、未読だが原作では各挿話の間に何かの繋がりがあったんじゃなかろかと思わせる。

 

そういう煮えきらない半端さを感じつつ、又あまりに作為的な設定にも鼻白みながら、それでもこれは子育てのしんどい局面の様々なエピソードのリアリティに納得性があって引き込まれてしまう。

それは、主に高畑充希の挿話が牽引していると思われる。菅野と尾野真千子が如何にもなハイソなお家にお住まいの家庭なのに対して、彼女は長屋住まいのシングルマザーでダブルワークで必死こいて頑張っております。奇矯に振れない設定は無理がない。多分こういうお母さんは山ほどいるだろうと思わせる。ここで★1加点しました。

 

見てるあいだ、こんだけ子育てのしんどい局面ばかり見せられたら、これから子どもを待とうかという女性は退かへんかと思ってましたが、終盤の菅野ママの台詞で氷解します。

まあ、尤もらしく子育て子育て言ってますが、この映画の男たちは見事に子育て知らんぷり野郎どもです。で、俺もそっちタイプでした。懺悔します。

 

ラストクレジットで真行寺君枝烏丸せつこの名前を見て衝撃だった。あとヤクザじゃない菅田俊はやっぱりヤクザっぽかった。

 

3つの挿話が大して連関しないのに劇作の破片が残る未達感はあるし、子に背かれる尾野と夫に裏切られる菅野の家族が作りすぎの嫌いもある。そんななか高畑のパートが地に足ついた現実社会への即応で牽引する。藤原・烏丸も好助演だった。(cinemascape)

 

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