男の痰壺

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グリード ファストファッション帝国の真実

★★★ 2021年6月28日(月) 大阪ステーションシティシネマ

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この邦題「ファストファッション帝国の真実」ってのに騙された。

リテール分野で数社が世界を牛耳る今の業界構造に包括的に迫るのかと思ったのだが、結局は1人の男の成り上がり譚でしかない。

 

繰り返し描写されるのは買い叩きであって、そこから発生する川上を担う後進国の劣悪な労働環境。それは確かに問題の1面だが、なぜにここまでの寡占が生じるかの解にはなっていない。

 

成り上がり野郎が金に飽かせて還暦祝いの一大パーティー古代ローマの衣装にミニチュアのコロシアムと絵に描いたようなスノビズムにシラけそうになるが、かのカルロス・ゴーンのベルサイユ結婚式とか見ると強ち凡庸なカリカチュアとも言えないのかも。

このパーティーの準備と過去挿話がカットバックされつつクライマックスへ雪崩れ込むのも、類型的で先が読めてしまいます。

 

世界の金融資産の5割を10%の富裕層が所有するハイパーな2極化は、ITの加速的な進歩と付随する金融商品や投資手法の発達に裏付けられる。

それを貪欲な男の買い叩きとスリランカの貧民出の少女の反攻に収斂するウィンターボトムの感性は残念ながら20年遅れてると言わざるを得ないっす。

 

ファストファッションの興隆メカニズムを解くのでなく単なる銭ゲバ野郎の盛衰譚で終わったのが志低い。降って沸いたかのスリランカ少女反抗の比重がどうにも中途半端で物語に必然の帰結でなく後付け講釈の手緩さしか与えない。題材への斬り込みが安易なのだ。(cinemascape)