★★★★ 2021年7月14日(水) 大阪ステーションシティシネマ5
全体的に出たとこ勝負の感が拭い難いと思う。
それは、作り手が謎の解答や物語の帰結を了解したうえで見るものを煙に巻くんじゃなくて、作ってる方も何だかわかんないまま成り行きで物語が転がった風に見えるから。
って、俺が勝手にそう思ってるだけで綿密なロジックがあるのかもしれませんが。
いずれにせよ、そういうのが悪いわけでもない。観客が感情を寄せる何某かがあれば。
今作の場合それは、うっとおしい上司と缶詰状態で仕事せにゃならんシチュエーションの共感性で、わー絶対しんどそう的な微妙なリアリティが作劇を牽引する。
中盤以降、上司が怪奇タコ人間かと疑い出して精神的に追い詰められて崩壊していく。ポランスキーやコーエンなら常ならざるに一気に持っていきそうなところだが、アルコールネタで俗世に一旦ゆり戻す。
終盤、泥酔い塗れのゲロ糞尿と台風での家屋崩壊と浸水とでぐちゃぐちゃになる辺り。カタストロフィに雪崩れ込むに充分な畳み掛けだ。
でも、肝心なところを見せずにぼやかしたのが、やっぱ点睛を欠きますなあ。
見せない方が良かったってことも間々あるから微妙なんですけど。
海獣たちの日常への侵蝕と加速するアルコール禍が交錯・相乗し嵐の到来でゲロと糞尿塗れのカタストロフへ至るあたり人間暗部の顕現として乃至は負の感情の暴発として余念がない。だがそれを誘発するライトハウスの本性は見えない。そのへん点晴を欠く感じだ。(cinemascape)