男の痰壺

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MINAMATA ミナマタ

★★★ 2021年9月26日(日) MOVIXあまがさき9

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水俣病に冒された人たちの現実と企業との賠償闘争。

②写真家ユージン・スミスの人となりと水俣とのかかわり。

という映画としての2つの立脚点があるのだが、ジョニー・デップが主役である以上、当然①を徹底的にフィーチャーすることに尺を割けない。それが物足りないと言っても始まらないわけです。では、②が十全かと言えば、やっぱりそっちも物足りない。詰め切ってない感じがする。

 

彼は何度か翻意する。

最初は日本に来て水俣の現実を撮ってくれとの申し出を断る。しかし、渡された資料写真を何気なく見て起こっていることの悲惨さに動かされる。わけだが、やっぱりここは、露悪的の誹りを恐れずその写真を見せないとあかんやろと思った。

いざ、現地に乗り込んだものの住民たちの非協力的な態度に俺やっぱりムリかもと思いだす。しかし、病気で障がいを負った少年の無垢に心が動かされる。

被害者の交渉闘争が佳境を迎えるころ、苦労して撮った写真もろとも掘建て小屋に作った彼専用ラボが焼き討ちに合う。それまでの経緯もあって心が折れて仕事降りると言う。でも、献身的な協力者たちに励まされ、心を割ってあなたたちを撮らせてほしいと言う。

こういったユージンの心の揺らぎの描き方は悉く詰めが甘いと思うんです。実人物の実話ということに頼っていると思いました。

今回、興味をもってウィキでユージン・スミスの項をざっと読んでみて尚更、その感は強い。

 

本作の公開に合わせて土本典昭の「水俣 患者さんとその世界」、「水俣一揆 一生を問う人々」が上映されていて、こっちを見るべきやと思ったんですが時間を合わせられませんでした。

 

外国映画への意欲が強い四天王とも言える男優が揃い踏みしている。皆好演だし、描写に変チクリンなとこもあまりなかったのは、彼らの真摯さの賜物でしょう。

 

主人公が再三にわたり翻意する物語だが納得するような掘り下げもなく悉く物足りない。嘘でもいいから「チッソ」への怒りや患者たちとの共闘意識をと思う。異界めいた東欧ロケの水俣だが勢揃いした御用達役者たちが辛うじて患者たちへの思いを繋ぎ止めている。(cinemascape)

 

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