男の痰壺

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ほんとうのピノッキオ

★★★ 2021年11月15日(月) 大阪ステーションシティシネマ

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「ほんとうの」ってなにがやねん。普通のピノキオやないかい。原題も単に「ピノキオ」やん、ええかげんなことすなよ配給会社。

ってことで、「本当は怖い童話」みたいな先入観を持ってた俺はかなりがっかりした。なんせ本作の監督マッテオ・ガローネは毒ありまくりのダークファンタジー傑作「五日物語」をものにしておりますから。

とは言ってもピノキオの話もほとんど忘れてたので、おもしろくはあったんですが。

 

この映画がそれでも特異だと思われるのは、ピノキオをはじめ、コオロギやマグロに至るまで出てくるキャラをほとんど人間が人面で演じている。最初にピノキオが拾われる人形劇団の操り人形たちも全て人間で、糸で動かされているというより勝手に動いてる感ありありで、結果、自由のない憂き身のもの悲しさは倍化される。

道中でピノキオを策弄するキツネとネコもおっさんで、尾羽うち枯らした風情がたまらなく剣呑だ。俺は昔見たスタンリー・ドーネンの「星の王子さま」を思い出していた。あの映画でも主人公の子ども(王子さま)をたぶらかすヘビをボブ・フォシー、キツネをジーン・ワイルダーが演じておりました。

 

遊んでばかりのクソガキは、ろくなことになんねーぞってのが物語の骨子なので、ピノキオは良い子、悪い子を往還する。一旦真面目に勉強して成績も上がってきたが、悪童に誘われて遊びの国への誘いに乗り、さんざん遊び呆けて哀れロバにされる。このシーンのメタモルフォーゼの生な衝撃は「千と千尋」の冒頭シーンに連結するんでしような。

 

おじいさんの役をロベルト・ベニーニが演っていて、彼は自身の監督・主演で「ピノッキオ」なる映画を撮っている。おっさんのピノキオという不気味な無理筋で俺は未見ですが、拘りがあるんでしょう。このベニーニは抑えた演技ですごく良かったです。

 

ピノキオに関わる動物・魚貝・昆虫などを人間が不気味に人面で演じることで生臭い憂世の機微が表層化する。しかし、所詮は教導的な原作を逸脱するものではなくガッローネとしては物足りない。唯一メタモルフォーゼの衝撃は『千と千尋』の冒頭に連結する。(cinemascape)

 

 

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