男の痰壺

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喜劇 “夫”賣ります!!

★★★★ 2021年11月22日(月) 新世界東映

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女の方からグイグイ来られる。モテない男の願望かもしれませんが、こういうのに俺は弱いんです。もちろん、来る相手にもよるんですが、今回それは佐久間良子ですから。ちなみに俺は彼女のことを、今でもよく特集上映される若尾文子に匹敵する時代のミューズだと思ってます。

 

伊賀上野の大店の後家の当主が佐久間良子で、その専属運転手がフランキー堺。2人は小学校の同級生であったが、今や境遇は天と地であります。序盤で名士たちを招いての宴席に「お前も来なさい」と佐久間に言われたフランキーがいそいそ訪れると客たちの面前で「何しに来た、お前が来るところではない」と罵倒する。その氷のような眼差しがたまりませんなあ。まあ、そこからツンデレ展開になる前振りは十全です。

一方で、フランキーの嫁の森光子は、貧乏世帯の切り盛りで疲れ切ってるところに姑の執拗ないびりもあり今にも消え入りそうな風情。これが、夫と佐久間の関係に気づくと何かが吹っ切れたように攻勢に出る。髪を結い上げ化粧もした森がシャキシャキのし上がっていく。

 

この映画、そういったドテン買いの作劇が決まって、相当にインモラルな物語を押し流していくのが重曹的で厚みがあると思いました。

監督の瀬川昌治は多くのコメディ系のプログラムピクチャーを手がけた人みたいだが俺は全く見ておりませんです。

 

打たれた頬の仄甘い記憶に惑うツンデレ佐久間と姑の痛ぶりに消え入る手前で豹変する森という女たちの振れ幅に挟まれ男フランキーも生命力を取り戻す。インモラルと同衾する時代の活力。そして全てを帳場で差配する多々良・浦辺の奥行き。(cinemascape)

 

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