男の痰壺

映画の感想中心です

黄昏のユニコーン

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「僕らの自由を〜僕らの青春を〜」

「おっ」

「〜げさに言うのならば〜きっとそういう事」

「〜なんだろか、モラトリアムモードっすね」

「お前さ、ユニコーンって聞いたことあるか」

「えーまあ、でもこれは民生のソロっしょ」

「なに言ってんだよ、ユニコーンってのはな、未上場のスタートアップ企業で企業価値10億ドル以上の有望企業のこと言うんだよ」

「はあ」

「それがさ、日本に何社あるか知ってる?」

「見当もつきやせん」

アメリカ470社、中国169社、インド48社、イギリス34社だとよ」

「ふーん、ならアメリカの半分、中国のチョイ上で200社くらいっすか」

「バカヤロー、いつまで大国気取りでいやがんだい、耳かっぽじって聞きやがれ、日本のユニコーンはな、たったの5よ」

「えっ」

「日本はな、日本てヤローはな、この30年で根腐れしちまったのよ」

「ありゃま、天下の一大事だ」

「だよな、一大事には対処療法なんて効きやしねえぜ、大鉈振るうしかない」

「へい」

「もう、規制緩和とか生ぬるいことやってらんないぜ、規制撤廃だよ」

「大丈夫かな」

「そんでベーシックインカム導入して、教育費全額無償化、かわりに老人の医療負担は全額実費だよ」

「老人は医者にかかるなってか」

「仕方ないよな、5人で1人支えてた時代はとっくに終わってて5人を1人で支えるのなんかムリなんだから」

「御輿がつぶれるよね」

「生半可でお茶濁せた時代は終わったんだよ」

「泣いて馬謖を斬れですか」

「こうしちゃいられねえ、行くぜハチ公」

「ガッテンだ」

 

数日後、アクセルをブレーキと間違えた松本寛次郎(82歳)・無職の軽自動車に彼らは轢かれて入院した。