男の痰壺

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JOINT

★★★ 2021年12月6日(月) シネリーブル梅田3

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キネ旬の短評欄を見ていて3人の評者が高得点をつけている。1人などは「これはもう事件」と言っている。事件と聞いて立ち読みしていた俺は急遽見る予定だった映画をこれに変えました。

であるが、事件でもなんでもなかった。

 

大まかに言って、これは務所を出た半グレ男のシノギの話で、組に属するヤクザではないので、斬った張ったや怒号飛び交う修羅場もあまりない。新人監督と新人キャストで低予算のうら寂しさは「竜二」を彷彿とさせる。

 

まあ、時代が移ろいでヤクザ稼業も尻つぼみなのは今年公開された「ヤクザと家族」でも描かれていたし、主人公が最初にシノギのネタにする「名簿」も知りあいの広告会社の男から顧客データを回してもらう際「もう、こんなもん金にならないよな」という自嘲から時代が変わったことには意識的ではあるようた。でも、そういったデータをどうブラッシュアップしてどういう末端に流して金になるのか。この映画のリアリズムを志向するスタンスなら、そういう細部まで突っ込んで描くことこそやってほしかった。

 

次に主人公はベンチャーに投資する話に乗って潰れかけの企業向けマッチングアプリ開発会社に乗り込む。篇中「100社に1つモノになるかどうか」との会話があるが、ならどうしてその会社に賭けてみる気になったのかはさっぱりわかりません。少し軌道に乗って取引先とのプレゼンに臨むが「私はかつて道を踏み外した云々」を言って相手の気持ちを惹きつける、って甘いなあ。反社を匂わせた段階で即アウトっしょ。

 

そのあと、舎弟のいる組の内紛他いろいろあって常道のヤクザ映画めいていくが、どうにもスッキリしません。それは、主人公が最後まで枠外からというスタンスのままだからと思われるのです。

 

名簿の件はともかく、ベンチャー企業への侵食が足蹴にして食い潰すでなくまともにビジネス成功させようとするあたり一体何の映画見てるのかハラホレである。で、組の内紛に巻き込まれジャンルの残滓を纏い始めるが、所詮は枠外に留まる為残尿感は免れない。(cinemascape)

 

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