男の痰壺

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新世界の夜明け

★★★ 2021年12月20日(月) シネヌーヴォ✕

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新世界と飛田界隈の裏通りが思った以上に撮れていて、腰据えて撮ったんやろなと思わせます。「月夜釜合戦」「解放区」と合わせて特集・新世界とでも銘打って上映したらオモロいかも。

 

言うなればこれは、金持ちお嬢のプチ冒険譚であり、身の回りの限られた世界では知り得なかった何かを異郷で見つける話で、放浪者を標榜する監督リム・カーワイの自己投影も少し入ってるんでしょうか。でも、後半にそういう乙女チックお伽噺な構図が浮かんでくると予定調和の陥穽に陥りつまんなくなりました。特に中国の喧嘩別れした彼氏が派遣したホワイトナイトみたいな男が何でも解決してしまう。これってどうなんでしょうか。もっと彼女には苦渋をなめて欲しかった。

 

とは言っても汎アジア的な視座が随所で顔を出すのがこの監督の唯一無二なところで、来日20年というスナックのママが天安門事件の折に日本へ来たと述懐する件や、飛田商店街で毛沢東語録を喧伝するホームレスなどのエピソードは日本の監督では考えつきもしないだろう。

 

それにしても主人公の友達の留学生アイビー役の宮脇ヤンちゃんは可愛いっすな。役も良かったし。

 

金持ちお嬢のプチ冒険譚。身の回りの限られた世界では知り得なかった何かを異郷・新世界で見つける話だが猥雑なヒリヒリ感は後半になるとホワイトナイト男が何でも解決で消失する。とは言え汎アジア的な視座が随所で顔を出すのがこの監督の唯一無二のところ。(cinemascape)

 

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