男の痰壺

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怒りの日

★★★ 2022年1月9日(日) テアトル梅田1

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そもそもに、その強烈な怒りが向けられるべきは夫ではなく姑ちゃうのんとの思いがある。そりゃ娘ほどの歳の差の妻を娶った夫はどうかと思うが、そんなに悪い男でもなかろうに。

 

この映画は、そういった時代の婚姻風土がもたらした不幸と並列して、当時の教会の権威が行った異端審問の人非人な非道を撃つ。「裁かるゝジャンヌ」でも描かれたモチーフであることからドライヤーはこのテーマに並々ならぬ執着があったんだろう。

 

【以下ネタバレです】

実際、本作で最も鮮烈なのは、傍系の近所の主婦が魔女との嫌疑をかけられるエピソードであり、火炙りは嫌だと泣いて懇願する様は強烈。裸にひん剥いての拷問に際し、しぶとい女だと更なる責めを命じる教会の面々。結局、彼女は火刑に処せられるが、火炙りの傍では少年たちが讃美歌。

 

このエピソードを挟んで主人公は変容する。抑圧されてきた感情は、抑えを失いマグマのように噴き出してくる。姑への敵意も隠さなくなり、希望を託した若い息子への思いは加速する。しかし、息子は旅立つらしい。再び閉ざされた希望と救い難い絶望の中で抑え込まれていた彼女の潜在能力が解放されて炸裂する。

ってこれ、デ・パルマの「キャリー」みたいですなあ。本当にこんな話なんやろか。

 

圧倒的な高評価の本作ですが、★3にしたのは、その辺の釈然としなさのせいでしょうか。

 

姑の執拗なな嫁いびりや教会の恣意的な魔女裁定など解り易いテーマが描かれるが、そのことによって何か深淵な心理が暴かれるわけでもない。抑圧による怒りが潜在能力を解放する『キャリー』あたりと同根の物語に見える。火刑の即物的な禍々しさは比類がない。(cinemascape)

 

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