男の痰壺

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ちょっと思い出しただけ

★★★ 2022年2月26日(土) シネリーブル梅田1

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見てませんけど「花束みたいな恋をした」と比較するような評を見たことがあったので、男女の出会いと別れみたいな話だろうとは思われ、そういうのはもうええかなとも思ったのだが、伊藤沙莉のハスキーボイスに悩殺されたくて見ました。

 

【以下ネタバレです】

タクシー運転手をしてる沙莉と舞台の照明係をしている池松をカットバックする。2人は交わらない。ははーん、これから出会いってわけねと1人合点した俺だが違ってた。

冒頭にカレンダーを映してシークェンスは始まる。そのシークェンスの連なりが、どうも現在から過去に遡及していってるらしい。と気づいたのは大分経ってからであった。つまり最初に描かれた2人は別れてしまったあと。

 

結末のわかった物語の何故そうなったかを詳らかにするザ・倒叙形式な映画だが、ミステリー要素があるならともかく、そんなもんはないのでひたすらに浮かび上がってくるのは虚しさだけです。

 

誰でも過去の記憶の断片が何かの拍子に頭をかすめて胸をかきむしられるような思いにとらわれることがある。そんなとき過去を取り戻そうと足掻くのが映画や小説の常套だが、実際の我々は「ちょっと思い出しただけ」で済まして現在の生活の営為に流されていく。そういうアンチドラマ性を纏ったこの映画は新しいとは思うけど、そこを十全に拾い上げてキャプチャーできてたかは疑問です。

 

松居大悟の映画は「アズミ・ハルコは行方不明」以来だが、あの映画が何か未完の大器を思わせる得体の知れなさがあったのに比べて今回は小じんまりとまとまってしまった印象がありました。

 

ちょっと思い出しただけの記憶の断片が時に胸掻きむしったりするけどあくまでそれはちょっと思い出しただけで瞬く間に日々の営為の中に埋没してしまう。そういうアンチドラマな何かを捉える方法論としての倒叙体ならやはり進行形の今と錯綜させる術が欲しい。(cinemascape)

 

 

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