男の痰壺

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インフル病みのペトロフ家

★★★★ 2022年5月18日(水) シネリーブル梅田4

アレクセイ・ゲルマンデヴィッド・リンチを思わせる、とのコメントを見たのだが、ソビエト〜ロシア近代史の混沌を背景にした映画が同じ体臭を纏うのは宜べなるかなである。一方で互いに連関しない挿話が時代と場所を跳躍して無秩序に入り乱れ、そこに夢か現かわからないイメージが混入する様はリンチの「インランド・エンパイア」みたいだと言えなくもない。

 

正直、見てる間、スクリーンに映し出されたものは、多分に俺の脳神経の表層を掠めていくだけで本質的な理解には程遠かったように思うのだが、それでも骨太な筆法と自在なイメージの混沌は見るに値すると思った。

 

3つの時代が描かれる。現在、主人公の青年時代と少年時代。少年時代には唐突に全く連関しない女性の話が割り込む。入れ子細工のように。少年と女性はワンシーンだけ遭遇する。現在パートでは、元妻の挿話が主人公の状況と乖離して描かれるのだが、あまりに突飛であり、特に殺陣は漫画みたいだ。バランスを欠いてると思った。

 

人を殺す、或いは人が死ぬプロットの多い映画だが、そこに思い入れがなく流れていく風景のようだ。一方で叙情的な場面は詩情が溢れている。

 

互いに連関しない挿話が時代と場所を跳躍して無秩序に入り乱れ夢か現かわからないイメージが混入する様は『インランド・エンパイア』みたい。人を殺す或いは死ぬプロットが多いが、思い入れはなく流れていく風景のよう。一方で叙情的な場面は詩情が溢れてる。(cinemascape)

 

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