男の痰壺

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未知への飛行

★★★★ 2022年5月29日(日) プラネットプラスワン

1964年制作で同年の「博士の異常な愛情」と扱うテーマで競合・紛糾したらしい。今回初見だが、確かに構成やキャラも相当にかぶっていると思いました。基地や作戦室や爆撃機のコックピットといった限定された舞台で展開する点。大統領や軍の最高幹部、タカ派の学者等のキャラが物語を牽引する点などが同じである。ルメットは悲壮な声高を抑えて冷めたトーンを貫く。シュアだと思うけど、そこから再反転させたブラックな詠嘆的哄笑に至るキューブリックがやはり1枚上手だと思いました。

 

全面核戦争による世界の終末。そういうものが60年代にはかなりの可能性で来るかもしれないと考えられていた。その肌感覚でのリアリティってのがヒシヒシと伝わってくる。広島・長崎への原爆投下から20年しか経てないし、62年にはキューバ危機で世界は全面核戦争のとば口に立ったばかりだった。

そういったある種の刹那感の濃厚さは、本作の方が秀でているかもしれません。

 

冒頭のダン・オハーリー演じる空軍将校の見る悪夢、ウォルター・マッソー演じるタカ派学者の女を殴るサディスティック風味など、本筋に関係ない60年代的な意匠も味わい深い。

 

間近な危機を濃厚に纏った世界観。地下壕の一室で1人世界の終末と対峙するフォンダの葛藤が表層的にしか描かれないのが逆リアル&クール。その決断を予知する空軍将校の悪夢や極右マッソーのサディスティックキャラなど60年代的意匠も味わい深い。(cinemascape)

 

 

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