「まいったなあ」
「ほんとにね」
「俺はさ、ぶっちゃけ安倍さんのことそんなに大した政治家だとは思ってなかったんだけどさ」
「そなんですか」
「うん、だけどさ、何だろねこの喪失感」
「はい」
「何かを掲げてきっちりやろうとする、そしてやり遂げてくれる政治家って、もういない気がする」
「まあ、安倍さん、やり遂げるって部分に関しちゃ未遂でしたけど」
「まあね」
「掲げた目標が難物でしたわな」
「戦後日本の根幹にこびりついた亡霊の駆除だもん」
「はあ」
「わかんねえか」
「憲法改正にしても新自由主義的な経済政策にしても亡霊の駆除なんだよ」
「そう見られてんだよ。貧困はアベノミクスのせいってな。ただアメリカなんかと違ってさ、突出した若い経済的成功者がブイブイ言わせてるわけじゃないんだな」
「そうなんですか」
「日本のは世代間格差じゃん」
「…」
「社会保障費使いすぎ」
「まあ、そうですけど、俺らもお世話になるんだし」
「だからさ、今のままでいいんじゃねえ、っつう年寄層が寄って集って反アベの論陣はったわけでね、お前もそんな風になりたい?」
「ガマンのしどころですかね」
「今回、殺ったヤローもさ、大方そういった手合いに煎じ薬盛られてんだよ」
「なーる、ありえるかも」
「おい、ハチ公、こうしちゃいられねえぜ」
「はいな」
「ここはひとつお前も鉄砲玉になって弾いてきな」
「鉄砲玉?」
「おうよ、そんで臭いメシ食ってこい」
「…」
「…」
「あんた行けば」