男の痰壺

映画の感想中心です

シャドウ・イン・クラウド

★★★★★ 2022年7月19日(火) 新世界国際劇場

なんだかこの映画に★5つもつけて見識疑われそうだが、良かったものはしゃーないっす。

 

まず、爆撃機の下部銃座室に閉じ込められたクロエの延々とした1人芝居が続く。機内の男たちの声はモニター越しにしか聞こえない。このかなりに徹底した叙法が新鋭ロザンヌ・リャンの映画センスを窺わせる。この設定は中段で放逐され「オン・ザ・ハイウェイ」や「リミット」みたいな1シーン1シチュエーションにはならないが、にしても見応え充分です。

 

展開が概ね想定されるものの半歩先をいく。

【以下ネタバレです】

閉じ込められたクロエが目撃するグレムリンは、まんま「トワイライト・ゾーン」のジョージ・ミラー篇なのだが、けっこうあっさり機内に侵入してきたそいつは、意外にも人間がタイマンで闘える。超常の欠片もない完全に実体化した生き物であった。びっくりした。

 

クロエの隠されたミッションのパートナー男も同乗してるが哀しいまでに影薄い。何故なら物語を牽引するのは徹頭徹尾にクロエの母性だからである。終盤でのグレムリンとの戦いで、ジャンパー脱いだクロエの上腕筋の発達は曲がったマッチョイズムでなく母なるものの強さを表して感動的であります。

 

なるほど「エイリアン2」に触発されたというのも頷けるのだが、やっぱ自分が産んだ赤ちゃんの為にってのが、真っ当に見る者を射てくるのです。

 

上記した2作品以外に「ダイ・ハード2」まんまやんギャハハのシーンもあり、引用の衒いのないド直球ぶりも好ましい。エンドクレジットには第2次大戦に従軍した女性兵士の記録フィルム。「プリティ・リーグ」を彷彿とさせる女性讃歌。

 

銃座に閉じ込められた延々たるクロエの1人芝居が骨太で来襲するグレムリン零戦への応戦も何やかんやで熟す。起動要因が男権へ抗する女性のマッチョ化ではなく母性というのが真フェミニズム。彼女の上腕筋の発達はポーズだけのフェミアクションを粉砕。(cinemascape)

 

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