男の痰壺

映画の感想中心です

ローカル・ヒーロー 夢に生きた男

★★★ 2022年8月18日(木) シネリーブル梅田1

よくあるスローライフ提唱映画の1つなんだろうが、田舎はいいなあってだけでは、汚れ切った俺の心は動くはずもないんです。

それなりに評価されてるみたいで、何かあるはずと踏んで見に行ったが特に何もなかった。

 

だいたいに最初から浮世離れております。それは、主にパート・ランカスターのキャラ造形にある。石油メジャーの創業社長で、スコットランド辺境の海岸町にコンビナート建設の用地買収で若手社員を派遣する。なのに、仕事の進捗と同時に天体観測の報告を求める。社長さん、星が好きなんです。こんな調子であるから端から物語の先行きは見えてるようなもんだ。

まあ、ビル・フォーサイスとしては、そういう通常のハリウッドライクな展開は志向してもなかったんでしょうが。

 

村人の描き方も微妙に外してるんだが外し切ってないのでモヤモヤする。土地売って大金手に入れることにキュウキュウとしてないし、まっそういう話ならそれでもえっかな程度です。

そんなんだから、物語は転がらないし、転がらないなりに挿話を連ねるんですけど、どれも一過性の単発不発弾めいている。

 

ラスト、何ヶ月ぶりかでNYの高層マンションの自分の部屋に戻った主人公が夜景を見て思う。何思ったかは知りません。常道なら全てを捨ててスコットランドに戻ろう、みたいな展開なんでしょうけど、そこまで迎合的ではない。

ここは良かった。

 

土地買収に湧くでもなく自然破壊に抗するでもない村人達相手で糞詰まるドラマトゥルギー。そのモヤモヤの中で可愛いウサちゃんを料理し恋女房を差し出す価値観は生活のリアリズムで都市生活の虚構を照射する。結果ランカスターの浮世離れは宙吊りとなる。(cinemascape)

 

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