男の痰壺

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西部の男

★★★★ 2022年9月19日(月) プラネットプラスワン

ウォルター・ブレナンのロイ・ビーン絶品とか言ったって当たり前すぎて面白くもないので、敢えてゲーリー・クーパーの腹芸も喰われてないくらいに味があると言ってみたい。

ブレナンが、いつもの憎み切れないクソ親爺なのに対して、クーパーは食えない好漢とでもいいましょうか。2人の個性が上手い具合いに噛み合って味があると思いました。

 

本筋は、開拓農民と牛飼い牧童たちの争いであり、そこに流れ者の男が来て農民たちの助っ人になる。まあ「シェーン」と同じ構図なのだが、牧童たちの存在感が希薄である。本来なら牧場主や牧童頭といった個のキャラが対立の片側を担うべきなのに偽判事ロイ・ビーンにそれを負わせているから何かモヤーっとする。同じことは農民側にも言えるかも知れません。

 

結局、クーパーとブレナンの対決に収斂していくのだがカタルシスはほとんどない。

良くも悪くも2人の役者を味わう映画だと思います。ブレナンは本作で3度目のアカデミー助演男優賞を受賞。ワイラーの演出、トーランドの撮影も特筆とまでは言わないけど手堅い仕事だと思います。

 

先乗り牧童たちと後続の開拓農民の争いという構図を背景にしたクーパーとブレナンの掛け合い漫才の趣きがあり、西部開拓史の歴史ロマンティシズムは遠ざかったが腹芸合戦の妙味はある。憎みきれないクソ親爺に対してその上手をいく好漢のいけずさ。(cinemascape)

 

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