★★★★ 2022年10月24日(月) シネリーブル梅田3
殺し屋とかギャングとかの描写がタランティーノ以降で人間性を加味されて大きく変容したと思っていて、それまではニヒルで寡黙な一匹狼と大方相場は決まっていたのである。
1984年の本作はスティーヴン・フリアーズの劇場映画初作であり、フリアーズは翌年に「マイ・ビューティフル・ランドレット」で注目を浴びることになる。タランティーノ「レザボア・ドッグス」が世に出るのは5年後の1991年です。
司法取引で証言台に立ったギャングを証人保護プログラム下から拉致って組織の大元に届ける仕事を請けた2人組がジョン・ハートとティム・ロス、拉致られるのがテレンス・スタンプ、彼らを追う刑事がフェルナンド・レイとうれしいくらいに役者は揃ったのだが。
拉致したスペインからパリへ向かう道行が、なんだかのんべんだらりと間延びしております。テレンス・スタンプは悟りの境地なのか変に腰が据わって態度もでかい。2人組は何時キレてもいいくらいなのだが、まともにスタンプの人生観とか聞いたりする。
この間伸びしつつも、瞬発的な判断で目撃された者を殺戮したりする。この2人組の生業に対するプロとしての間合いがタランティーノ的だと思いました。
最終盤、仕事に片をつけたジョン・ハートはそれまでのスーツを脱ぎ登山服に着替えて山岳地帯を降りていく。なんだか妙にそっちの服装が似合ってるのもご愛嬌です。結局下山してフェルナンド・レイに見つかっちゃうんですけど。
そう言えば、このフェルナンド・レイ。一言の台詞もありません。よう出たな。
殺し屋2人が標的拉致ってスペインからパリ目指すのんべんだらり道中だが、間延び展開を間断する殺し屋たちの瞬発的な生業に対するプロ本能。余裕かましたスタンプの土壇場での失落。時間軸の流れが随所で急変するが大方はだるい。人生とはそんなもの。(cinemascape)