男の痰壺

映画の感想中心です

窓辺にて

★★★★ 11月10日(木) シネリーブル梅田3

【ネタバレです】

 

こういう私小説的な題材の作品をオリジナル脚本で連発する今泉力哉は掛け値なしの才能だと思う。骨子は1つだけ。女房が浮気してるのを知ったのに嫉妬や怒りの感情が湧かないのはなんでだろーなんでだろーってことです。その真ん中のテーマの周りに多くの登場人物を配して直には関係ないエピソード群を紡いでいく。

 

傍筋でメインなのが女子高生の新人作家の玉城ティナとの交流で、フリーライターだが自身も嘗て小説を書いてた稲垣とティナとの絡みはすごく面白い。この映画の裏骨子だろう。(ただ、「HIBIKI」平手友梨奈、「騙し絵の牙」池田エライザと似たようなキャラが続いて若干食傷だが。)

稲垣のキャラが、おっさんと女子高生とのお付き合いにも関わらず毛ほども生臭さを感じさせなく、又それが不自然でないのが安心です。でも、それが夫婦との生活においても同じように生活臭を感じささないのは如何なもんでしょう。その無味無臭さが妻を浮気に走らせたんだとしたら、そのへんの主人公の性格というものを今泉がどう考えているのか。少なくとも否定はしてないみたい。

 

欲望ギラギラのおっさんおばはんがまだ少なからず棲息している日本で、若い世代から欲が消えつつあると言われて久しい。欲が消えた世界では、ゆっくりと産業・文化は滅んでいく。そんな時代を照射する作品だと思う。

完璧に近いフォルムを持った映画だが、そんな点で満点をつけかねるのです。

 

我欲を失してのプレーン人生は警戒されぬし腹も立たない。女子高生とのお付き合いではそれも又良しだが夫婦となれば話は別。現代日本に蔓延する空気を掬い取ったこの私小説的映画は豊富な傍筋と完璧なフォルムを持つ。でも欲得まみれのみっともなさ必要だぜ。(cinemascape)

 

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