男の痰壺

映画の感想中心です

すずめの戸締まり

★★★★ 11月28日(月) TOHOシネマズ梅田1

隕石の落下→大洪水による国土水没→ときて今度は地震です。仏の顔も3度と例えが違うのを承知の上で4度目はないぞと思いました。でも面白かった。「天気の子」より上位に置きたい出来だと思う。

 

今回、ひっかかったのは物語の展開が性急に過ぎる点です。特に前半がそうで、恋の萌芽から成育過程が描き込み不足で、主人公の女の子が青年のやろうとしてることに、最初からあそこまで肩入れすることに違和感があります。まあ、イケメンで一目惚れっつーこともあるんでしょうが、それにしてもね。

 

九州から東北までのロードムービーの体裁をとったのが前2作と違う妙味だが、あっち行ってもこっち行ってもすぐさま次々変異が起こるのも余白なさすぎな気がする。しかも地震の予兆→鍵をかけて鎮めるのワンパターン。

 

だが、中盤で閉じ師の彼が一旦退場して以降、映画は余白を得る。彼の友人の大学生と彼女の叔母が旅路に同道することになり、この部分に尺を割いたことが正解だった。クライマックスの畳み掛けはやはり大したもので、それは前段の余白が効果的に機能していると思うのです。

 

恋の萌芽やロードムービーの余韻は地震の予兆→戸締まるのワンパターン反復の特急電車な性急さに埋没しかけるが、閉じ師の彼が退場して以降の鈍行電車な余白が効いた。そのおかげで時と空間が縦横に錯綜し畳み掛ける終盤の新海お家芸も映えるってもんだ。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com