★★★ 2022年12月14日(水) TOHOシネマズ梅田8
食指の動かない題材であったが、主演が北川景子8割、瀬々監督2割の誘因が俺を動かした。って見てからずいぶん経ってますが。去年見ました。
第2次大戦終結後にシベリアに抑留された日本兵たちの話だが、今風ナショナリズム史観に沿ったソビエトってクソ国家だった的なとらまえ方が殊更強調されるわけでもない。戦時下ならこれくらいの理不尽はあったろうレベルだ。
過酷な収容所生活で多くの人たちの生きる支えとなった1人の男、なんていうと如何にもヒロイックで胡散臭さフンプンなのだが、ニノ扮するこの男は単に我を通すことに正直なだけで、たまたまその我が正道だっただけみたい。
このニュートラルな生き様はなかなかリアルな存在として体現が難しそうだが、その辺ニノはさすがやと思いました。ちょっと「ショーシャンクの空に」のティム・ロビンスを思い出してしまった。
終盤の佳境も上手い作りだと思わせます。見事にやられた俺は映画館の暗闇で親爺一匹滂沱の涙に塗れてしまいました。まあ、それもこれも景子ちゃんの凛とした佇まいがあったればこそです。
閉じられた環境で1人唯我独尊の生き方を貫き周りも感化されるというジャンル定型だが、ベタなヒロイズムでないニュートラルな佇まいをニノは良く表現し得てる。『ショーシャンク』を想起するほどに。終盤の畳み掛けに受ける景子の凛々しさも相俟る。(cinemascape)