男の痰壺

映画の感想中心です

無法松の一生

★★★ 2023年3月13日(月) 大阪ステーションシティシネマ

今回、俺が見た「午前十時の映画祭」では、撮影や公開の裏話みたいなのを取り上げた短篇がついていてありがたかった。なんでかと言うと戦時中の検閲で大幅カットされたことを知らないと、なんじゃこりゃとしか思えなかっただろうから。言わば肝腎要の肝を欠いたようなもんで、そりゃ監督の稲垣浩としては忸怩たるもんだったろう。後年、三船で再映画化したのもわかります。そっちはずいぶん前に見ました。

 

阪妻がいいのはわかってる。三船とどっちが良いか悩むとこだが、やっぱり時代の匂いがしみついてる感において本作の無法松は唯一無二だと思う。

泣き虫ボンに「おじさんは、今までに泣いたことは1回しかないぞ」と松が話してきかせる子ども時代のエピソードが良い。風景や行き交う人々の時代感も相まり泣ける。

 

終盤に時の流れをディゾルブの乱れ打ちで表現するシークェンスがあるのだが、撮影が宮川一夫っていうのが意外だ。ものすごく手の込んだ手間のかかることをやったらしいが、今となればそれほどの感興もない。切られた為もあるにせよ。

 

当処ない人生は生きる縁を得ることで180度変わる。だけど負い被さって懐いた子はやがて成長し遠くに巣立っていくだろう。それも又人生。煌めく日々の運動会と対置される少年時代の遠出の追憶。博多太鼓と連なる宮川のディゾルフ乱れ打ちは切られ無惨。(cinemascape)

 

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