男の痰壺

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午前4時にパリの夜は明ける

★★★ 2023年4月29日(土) シネリーブル梅田1

1980年代の7年間にわたる物語だが、みんなよく煙草を吸いまくります。家の中で食事中でも吸う。そういう時代でした。俺もあの頃は1日2箱吸うベビースモーカーでしたわ。

 

主人公は離婚したばかり。それまで専業主婦だったが子供2が人いて働かないといけない。でもスキルないし面接落とされまくる。深夜ラジオをよく聞いていたことから手紙を送ってみると、来るよう言われ電話受付として採用された。

 

とまあ、よいよ深夜ラジオという職場を得て、物語はそこを起点にどう転がるのかと思ったら、案外にその職業は深掘りされない。これは、80年代という時代設定にしても同じで、そこに何かの意図をこめる気配はない。ひたすらに淡々と話は進んでいく。その辺が物足りない気がしました。

 

でも、人生なんてそんなもんで、劇的なことなどそうそう起こるもんでもない。だけど、シャルロット・ゲンズブールの素を曝け出して尚泰然とした佇まいを見てるだけで魅せられるもんがあります。ラジオ番組のパーソナリティのおばさんがエマニュエル・ベアールだと後から知り、そう言われるとそうだわなと思いましたが、彼女にしてももう色気のいの字も脱色されたような存在感で、フランスの女優たちの豪気さはほんま素晴らしいと思いました。歳喰えば相応の佇まいを得る。それが当たり前なんです。

 

80年代の風景や市井の人々などのアーカイブ映像が挿入されるのだが、映像内容も画質もドラマと乖離している。そういう映画の嘘を上手く熟せる意欲や技量がミカエル・アースには無いみたいで、ケレンが無いのはいいのだけどちょっともったいないと思いました。

 

80年代という時代も深夜ラジオという職場も物語に機能的に関与せぬまま、家出少女との関わりや新しい恋人との出会いが劇的誇張ナッシングで綴られる。それでもシャルロットの長い紆余曲折を経た存在の無謬は何某かの感動を与える。ベアールも剛気。(cinemascape)

 

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