男の痰壺

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セッソ・マット

★★★★ 2023年5月3日(火) シネヌーヴォX

聞いたことない映画だったが佳作と言っていいと思う。1973年のイタリア映画です。

セッソマットって何やねんですが性と狂気の合成語とのことで、さしずめ「イタリア式SEX狂想曲」。俺やったら邦題そうしますね。

 

9篇の掌話からなるオムニバスだが、全てジャンカルロ・ジャンニーニが主演、8篇で相手役をラウラ・アントネッリが演る。2人の70年代の主演作は各々「流されて…」と「続・青い体験」しか見てませんが、演技力はともかくセックスアイコンとしての見方が先行してたように思う。でも本作を見て2人ともスゲー役者だったんだと改めて思いました。ジャンニーニはギンギンのイケイケイタリアンから枯れたハゲ親父まで、ラウラは富裕層のゲス夫人から貧乏長屋のおっ母さんまで縦横に演じ切って、この2人を見てるだけで全く飽きません。本作の数年後にヴィスコンティが遺作「イノセント」で2人を登用したのも納得する。未見なので猛烈に見たいと思わせられた。

 

話としては総じて他愛無いものなんです。オチもあーあって感じで脱力間際だが、勢いで持ってかれる。だが、1篇だけラウラが出ない挿話が「クライング・ゲーム」+「河」(ツァイ・ミンリャン)みたいな際どさに踏み込んで異彩を放っている。まあ、これも脱力風味があることは他と通底してるんですが。

 

9通りの変化を見せるジャンニーニと胆力据ったラウラの役者力が圧倒的なオムニバス。となればオチのトホホ感さえ好ましい。唯一の変則的挿話が2つの禁忌を越境する可能性を示唆して尚軽やかに脱力風味を携えている。狂った性のタイトルに相応しい。(cinemascape)

 

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