男の痰壺

映画の感想中心です

せかいのおきく

★★★★ 2023年4月29日(土) シネリーブル梅田4

おきくのまっすぐで可愛いキャラはアニメチックな既視感を覚えるのだが、阪本順治のオリジナル脚本なんだそうで、さすれば純粋で汚れのないキャラはもはやアニメの中にしか生息しない時代ということなんだろう。江戸末期という時代設定、モノクロの画面、そして何より黒木華タイプキャストとしての嵌り方がスコンと馴染んで清々しい。

 

おきくの父、佐藤浩市が言う。この空はずっと続いていってまん丸に繋がってるんだ。それが世界。俺の脳裏にあるカメラが世界地図の大俯瞰からトラックダウンしていって、日本の江戸の下町の長屋のおきくに寄っていく。世界という広大な普遍の片隅にいる唯一無二の存在であるおきく。それを愛おしむ気持ち。黒木華でなければ単なるカマトトにしかならなかったろう。

 

阪本フィルモグラフィの中で「ビリケン」「ぼくんち」「団地」などに連なるオフビートな軽喜劇の佳作であり、ネタとしての糞尿塗れをしてエコだなんだというのは穿ちすぎだろう。男ってのはみんなウンコが好きなんです。俺も子供の頃は授業中ノートにウンコの絵ばかり描いてました。

 

父はおきくを良い娘に育てたなと思う。開けゆく世界の広大な普遍の片隅に唯一無二の存在として在る彼女を愛おしむ物語は黒木華でなければ成立しなかった。糞尿に偏執的に拘るオフビート感が面映い青春を地に足をつけたものに昇華する阪本喜劇の佳作。(cinemascape)

 

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