★★★★ 2024年9月4日(水) テアトル梅田1
かなり良い。のであるがそれでも若干届かない感じ。それは、非日常に越境するかに見えて日常に収まってしまうあたりなのだが、でも考えてみたら、映画では越境する話ばかり描かれるわけだから、こういう収め方は逆説的にありだし、それだけに「ありがとうと言ってくれてありがとう」との主人公の心に沁みる嗚咽は帳尻の付け方としてこの映画に相応しいのかもしれない。いずれにせよ匙加減の微妙な線を狙って上手くいってるとは思う。
多分、全篇ほとんど手持ちカメラによると思われるのだが、演出は相当に計算していて、被写体の奥に人物や事象を縦構図に配置する画面が頻出する。ショットに多義性をもたらす手間を惜しまない。正直、前半はものすごい傑作かもとの期待があった。
状況が加速的に破綻していく。江口のりこ扮する主人公も決してロクな奴ではないことも見えてくる。だが一方で、度重なるゴミ捨て場放火事件、失踪したピーちゃんといったネタは手繰り寄せられない。そんななか、ホームセンターで働く外国人労働者だけは帳じりがつけられる。放火とピーちゃんも帳尻つけてほしかった。
不穏だけど整合性のあるリアクションの数々がピースとして存在するが、それらは何かに収斂していくこともない。そのあたりが吉田修一的なのかもしれない。