男の痰壺

映画の感想中心です

永い言い訳

★★★★★ 2016年11月5日(土) TOHOシネマズ梅田8
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売れっ子作家が妻の死によって自分の人生が実はカラッポだったことに気づかされる話…では終わらない。
妻への愛情はもうとっくに無いと高を括っていたが、その瞬間から愛人は去り著作のアイデアも枯渇する。
すがるように、敬遠してた同じく妻を亡くした男からの面会の誘いを受ける。
レストランでの初対面で男の子供が食アレルギーで発作を起こすが、こういうプロットが絶妙。
観客はここで一気に引き込まれるだろう。
それから彼の空白は子供という妻には拒否してたピースによって埋められていく。
まあ、ありがちな展開…かに見えたが、そう簡単には済ませません。
この西川美和という女。
 
結局、みんなあんまり上手くいきません。
ただ、この1周回って行き着いた境地は多分、足掻かない人生では勝ち取れないんよ。
…としみじみと詠嘆して映画は閉じます。
意地悪そうに見えて人間愛を感じますなあ。
 
黄泉へと誘われるかのような山道を登るバスの遠景ショット。
竹原に電話する本木を映す望遠レンズ使い。
対照的に使用される携帯録音声。
随所で技法がもう惚れ惚れするくらい冴えわたっている。
 
妻の死で人生の形骸が顕現し間隙を埋めるべく敬遠区に踏み込むが簡単にいく訳ない。だが1周回り行き着く境地は足掻かぬ人生では勝ち取れないとしみじみ詠嘆し映画は閉じる。偏屈な人間愛。山道を登るバスの黄泉への誘いや携帯録音声の対照。技法は冴え亘る。cinemascape()