男の痰壺

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彼女の人生は間違いじゃない

★★★★ 2017年8月5日(土) テアトル梅田1
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「喪失」といっても、肉親を失ったのみならず家や故郷や近隣の人々や一切合財無くなったっていうのは、ちょっと簡単に他者が推し量れるもんじゃない。
 
だからって、なんでデリヘル嬢なん?…ってことだが、逃避ということではないような気がする。
 
いてもたってもいられない空虚とか、足掻いたって埋めきれぬ寂しさとか、どうしようもない孤独とか、そういうものに寄ってたかって襲われたら人は病気になるしかない。
でも、病気になれなかったら、もう、ぶち壊すしかないんじゃなかろうか。
閉塞された日常を、行方を喪失した自分自身を、分かった風な世間の常識を。
 
で、デリヘルってことです。
本番をかたくなに拒否するのも、金が目当てじゃないから。
 
全篇、死んだように生気のない目をした彼女だが、映画の終盤でインサートされるデリヘルの面接シーン。
ここで、初めて感情を吐露して嗚咽する。
どうしてもやらなきゃならないんだと。
巧い構成だと思う。
 
廣木隆一の映画は「ヴァイブレータ」以来。
なんだか、もさい感じがして避けてきたが、真摯で衒いのない映画でした。
 
止め処ない空虚や埋めきれぬ寂寥や為す術ない孤独に纏めて晒された時に病気にもなれぬならぶち壊すしかない。閉塞された日常を行方を喪失した自分自身を分った風な世間の常識を。全篇死んだ目をした彼女が終盤の回想で感情を吐露して嗚咽する。シュアな構成。(cinemascape)