男の痰壺

映画の感想中心です

幼な子われらに生まれ

★★★★ 2017年9月23日(土) テアトル梅田2
イメージ 1
 バツイチ同士の再婚家庭で連れ子との関係がうまくいかないという、何の奇矯な設定もない話。
なのだが、終始不穏な緊張感が持続する。
 
キャスティングに因るのだろう。
「淵に立つ」の限りない悪意を飲んで潜めた男と「葛城事件」のタガが外れた規範で生きる女。
いつ本性を現して破滅街道を突き進むのかとの危うさがある。
最もこれは観る者の勝手で、作り手が狙ったのかはわからない。
(監督のインタビューでは田中麗奈に関しては「葛城事件」を見て決めたと言っていた。)
 
ちょっとした何かの掛け違いでずれていく感情のもつれは年月を経て増幅される。
「葛城事件」では、そういう増幅が破綻に至る過程が描かれたが、本作では新しい生命の誕生を機に一旦は修復へ向かったように見える。
どんな家庭だって、そういう危うい均衡の上に立っている。
この認識はクールで納得できる。
 
斜行エレベーターや通勤の路線の景観や1人カラオケが繰り返される。
冷んやりした心地いい孤絶感がある。
 
クドカンは助演賞を取るかもしれない。
 
再婚に於ける普遍的な確執を描いて何の奇矯な設定もない。のだが終始不穏な緊張感が持続。どんな家庭だってそういう危うい均衡上に立ってるのだとのクールな認識。斜行エレベーターや車窓景観や1人カラオケのリフレインが冷えて心地良い孤絶感を際立たせる。(cinemascape)