男の痰壺

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動くな、死ね、甦れ!

★★★★★ 2017年11月18日 シネヌーヴォ
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前半に関しても美点は多い。
イースト菌騒動による学校周りの泥濘の絶望。
スケートを買った直後の夜の池の孤独。
母の醒めた色気と子供に対する思い入れの真面さ。
 
だが、そういう一寸良いレベルから後半に映画は逸脱して地平を乗り越える。
世界は少年の周りから飛翔し拡散していくのだ。
 
収容所の女。
強盗団の面々。
少年と少女の理解を遥かに超えた世界が2人を侵食する。
そうして行き着いた顛末は母を狂わせる。
 
狂気とは、こういう風にしか描いてはいけないもんだとさえ思わされる。
 
悪ガキ譚としての日常が非日常へ延伸する契機の列車転覆や糞尿泥濘の醒め切ったスペクタキュリティもだが女囚の売春や強盗団の殺人など少年が見聞きし体験する外世界の非情こそカネフスキーの現状認識だった。1人世界を引き寄せた少女も断たれ母は狂う。(cinemascape)