男の痰壺

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KUBO クボ 二本の弦の秘密

★★★★★ 2017年12月5日(火) 梅田ブルク7シアター2
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道中を共にするサルとクワガタ男が何者かと知れたときに、映画は一変した。
 
いや、そこまでも十分に楽しめる出来ではあった。
だが、3種の神器ならぬ武具を求めての旅路は映画の骨法としてはあまりにオーソドックスだ。
しかし、道中でのサルのキャラが徐々に表出されるにつれ映画はいい方向に逸脱し始める。
これは、多分に声を当てているセロンに負うところが多い。
どっちかというと食えないキャラである彼女だが、ここでは慈愛を滲み出させて暖かい。
 
まあ、既視感あるっちゃあある部分も多い。
サルとクワガタのデコボココンビは「インクレディブル」の父ちゃん母ちゃんみたいだ。
冷酷シスターズは「千と千尋」の顔なしそっくり。
弦の波長が破壊力をもつってのは「カンフー・ハッスル」を思い出した。
 
昔でいうダイナメーション手法だそうだが、かのハリーハウゼンのようなギクシャク感はない。
CG全盛の時代では、どんだけ手間ひまかけても、どうせCGやろ…で終わってしまいそうだ。
 
子供にとって、両親に囲まれて一緒に食事をするってのがどんだけ大切か思い知らされる。
そのメッセージは具体的だし心がこもっている。
そういう揺らがない思いが、映画を強靭に支えるのだ。
 
ラストクレジットでビートルズ(というよりジョージ・ハリソン)の名曲がカバーバージョンで流れる。
巣晴らしい選曲だと思った。
 
既視感ある設定の寄せ集めを取り敢えず手法と舞台の新奇さで糊塗。そういう醒めた感情に風穴を開けるセロンの慈愛。俄かにローリングし始めた物語は顔無しシスターズ登場で佳境へ、そして失速。が、欠落した家族再生という強靭な思いは映画を支え続ける。(cinemascape)