男の痰壺

映画の感想中心です

婚期

★★★★★ 2018年1月7日(日) シネヌーヴォ
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嫁と小姑の間の軋轢という小さな世界が取り上げられる。
しかし、否応なしに映画は拡張して周囲の世界も取り上げてしまう。
その意図せざる、多くの些末な出来事の豊穣なことといったらない。
 
船越英二の亭主であるが、愛人1号・2号を囲いつつ、女房には言いたい放題。
高峰美恵子の長女は、バツイチでファッションデザイナーで愛人あり。
北林谷栄の家政婦は結婚歴3回で結局は血縁のない娘が一番可愛い。
 
中心軸の京マチ子若尾文子であるが、文子が攻めでマチ子が守りなのが新鮮。
 
宮川一夫の撮影が絶品で黒色の出し方に相当に意識的だ。
随所の俯瞰アングルも冴えている。
宮川・京・若尾の組み合わせは他に「ぼんち」や「女系家族」があるが、監督は3作とも違う。
 
嫁小姑の軋轢をメインにしてるが世界はそこに留まらず拡散する。全くロクなもんが居ないというニヒリズムが根底にあるのだが艶っぽさが絢爛で覆い隠される。入浴シーンのエロティシズムや随所の俯瞰ショットと「黒色」への拘りなど宮川の趣味が炸裂する。(cinemascape)