男の痰壺

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勝手にふるえてろ

★★★★★ 2018年1月8日(月) シネリーブル梅田2
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俗に言うと、イタい女ってことなんだろう。
いかにもな文学少女っぽい言い訳がましい自己表現が若干鼻につく。
 
…のだが、そういう懸念をふっとばす勢いがある。
俺は、15年前に「GO」の行定演出を見たときに感じたグルーヴ感を久々に感じていた。
 
イタいことを全肯定している。
誰それが好きとかどうとかの恋愛感情一本絞りで迷いがない。
 
原作未読なのだが、内省的語りを、或いは歓喜の発露を表現するに、他者に語るという構造。
そして、それが反転して、彼女の隔絶された社会環境が解き明かされる。
恋愛のアップダウンのグラディエーションとリンクしているのが骨太だ。
すばらしい脚色でありアイデアだと思う。
 
終局、玄関口での「妊娠してない」からの2人芝居。
感情は喜びと切ない怒りとを往還し押しと引きを多層に交えて一体化する。
恋愛はきれいごとじゃないのだ。
 
松岡茉優は「ちはやふる 下の句」の孤高のクイーン役で印象的だったので記憶にはあった。
しかし、こんなにリアクション芝居が達者な女優とは思わなかった。
この作品は彼女にとってすばらしいマイルストーンになったと思う。
 
内省的文学語りな自己表現の危うさをイタさの全肯定と恋愛への迷い無さを伴った演出の強度がぶっとばす。ギミックも冴え特に歓喜を表す他者語りが反転し社会関係の隔絶に転じるあたり鮮やかだ。恋愛は綺麗ごとじゃない。終盤の愁嘆場はそういう意味で完璧。(cinemascape)