男の痰壺

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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

★★★★ 2018年3月17日(土) シネリーブル梅田1
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前作「ロブスター」は設定自体が捻りまくったものだったのだが、今作はそうではない。
ストーリーのみ見れば、これは至極まっとうなオカルト映画だ。
医療ミスってのも、恨まれる経緯としては在り来たり。
その恨みの報復が一種の呪術なのだろうが、そこを直截に描かないのだ。
描かずに描くってのがランティモスのランティモスたる所以なのであろう。
 
冷え切った即物描写を貫徹し、ものすごくスタイリッシュってのは下手すりゃあ見え見えなのだが、
こうも確信的に押し出し強くやられると、ストーリーにではなく作り手の感性が不気味に思えてくる。
ありえないバッドエンドだが、この監督ならさもありなん…って気もする。
 
焼きそばみたいなパスタ喰いが強烈だ。
 
シンプル過ぎるまでにB級オカルトの梗概なのに凄まじい抑圧を科した空気の密度と抑制された台詞・演技の空隙によりギリシャ悲劇めいた格調に至る。とんだハッタリの三百代言だが突き抜ける終局の帰結はシャレじゃないレベル。そして夢に出そうなパスタ喰い。(cinemascape)