男の痰壺

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犬ヶ島

★★★★★ 2018年5月28日(月) TOHOシネマズ梅田4
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七人の侍」の主題曲を、俺は今までいい曲だと思ったことはあんまりなかった。
のであるが、やさぐれた捨てられ犬たちが愛犬を探しにきた少年のために一肌ぬぐってとき。
それが高らかに鳴り出して、胸がざわついた。
 
義侠とかウェス・アンダーソンが真面目に取り上げるとも思えないので、一種の諧謔なのだろう。
しかし、なんだか真面目に打たれた俺の頭の中では、見て数日経っても、その曲がリフレインし続けている。
 
俺は、熱心なウェス・アンダーソンの観客でもないので、直近の2作しか見ていない。
それでも、画面造形は、いつもの通り2次元の絵本のようだと思った。
それを、隅々まで意匠を凝らして磨き上げる。
だが、一方で、こんなに平易な感情の吐露でいいのか?とも。
 
やさぐれた奴らが、四の五の言いながらの道中がたまらない。
それを、ビッグネームがあててのコラボレーションは、さながら上質の漫談のよう。
犬は総じて無表情を基調とされてるので、ボンクラ感が横溢する。
それが、台詞回しの味と化学反応を起こして愛しさと可笑しさが爆裂する。
 
物語は、あほみたいに完全無欠に平易。
でも、そんなことは気にならない。
 
喜怒哀楽を顕さない呆けたワン公たちが四の五の言いながらの道中記がパロディックな「侍のテーマ」を契機に深層心理に訴えかけエモーションを喚起する。その衝撃が2次元絵本な画面作りの細密な計算を皮相に際立たせ阿保らしい人間世界の物語を糊塗するのだ。(cinemascape)