男の痰壺

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瘋癲老人日記

★★★★ 2018年6月5日(火) シネヌーヴォ
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谷崎原作のド変態映画なのだが、奇をてらったところがないのがいい。
増村あたりが撮った「卍」や「刺青」。
市川が撮った「鍵」や「細雪」。
とか、色気を出して原作に拮抗するもんをっていう力みがあります。
その点、木村恵吾は真面目で実直。
なのに題材がド変態だから原作と均衡している。(って原作未読ですが)
 
山村聰の金持ちじじいが歳くって色ボケして息子の嫁に貢いでいく。
この山村聰ってのがミソで、小沢栄太郎とかだったらスケベで当たり前だがクソまじめ人間の爺いがボケた。
って感じがすさまじく痛ましい。
床這いつくばってキッスのおねだりとか振り切れております。
 
まあ、昔は金持ちの爺さんしか、こんな手厚い介護は受けられなかった。
のだが、今日日の介護制度のもとでは、実はこんな話そこら中に転がってるんでしょうな。
もちろん、相手は若尾文子ではなく、そのへんのおばちゃんヘルパーなんですが…。
 
振り切れた2人芝居のSM芸は書斎と隣接する浴室という装置で肢体の可動性を高められ結果コメディにまで延伸する。木村恵吾の演出は実直に谷崎と対峙するのでド変態世界が緩衝されて品があるのだ。固定カメラによる旅館での足型取りの絶望的無常。(cinemascape)