男の痰壺

映画の感想中心です

響 HIBIKI

★★★★★ 2018年9月23日(日) MOVIXあまがさき1
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月川翔という監督の「君の膵臓をたべたい」は見てるが、正直、凡庸な印象しかなかった。
でも、これは見違えるように良い。
差釣りが鍋島淳裕に変わったのが大きかったと思う。
 
持てる者と持たざる者の話。
ってくれば「アマデウス」の変奏かと思うのだが、ちょっと違う。
 
世間に阿らないとか、論理的思考でしか行動しないとか。
主人公の造形は、まあ、ありがち。
むしろ、かなり適当な感じがする。
それは、キャラ創造に於いて、生煮えで突き詰めてない感が多分にあるからだ。
主人公の響は篇中、2度死にかけて偶然助かる。
これが、2度とも偶然ってのが、どうもひっかかるところなのだ。
 
まあ、しかし、そんなこともどうでもいいくらいに映画はドライブしてくれる。
このドライブ感は、21世紀の初頭に「GO」という映画を見たときの感じに似ている。
 
この映画にサリエリは登場しない。
どんなにイヤな野郎も、それを見抜く能力がある限り響の才能を認めて讃える。
そこに躊躇はない。
明快で毅然としている。
何という気持ちのいい理想郷であろうか。
 
いやあ、実際の世間は、そんなにいい奴ばっかじゃないし…。
そんなこと、百も承知で尚、この他者を容認する世界は叩きつけられたように思える。
 
阿り忖度無縁の主人公はまあ有りがちだし生を運に委ねすぎで自己矛盾を露呈するのだが、それでも天才である描写が堂に入っている。持たざる者たちの尊厳を大事にして彼ら彼女らのリアクションが命と見定めたのが正解。速度とドライブのかかった理想郷が現出。(cinemascape)