男の痰壺

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1987、ある闘いの真実

★★★ 2018年9月27日(木) シネマート心斎橋
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ナ・ホンジンの2作(「チェイサー」「哀しき獣」)で主演をつとめたキム・ユンソクとハ・ジョンウの3度目の対峙作。
なんて見方は、本質からずれているのだろう。
それでも、この中盤でほとんど消える検事のジョンウという構成がやはり弱い。
 
1987年に隣国で、このようなことが起こっていたことを、俺を含めた日本人は知ることはなかった。
そういう内向きな国民であることを自戒すべきだと思う。
が、それより、同一民族が引き裂かれ、骨肉合い食む殺し合いをせざるを得なかった朝鮮半島を取り巻く世界状況について改めて思いをはせるのであった。
日本はアメリカ1国に占領されてラッキー!なんて言ってられるのも太平楽すぎる。
それくらいに、対共部隊の南営洞のリーダー、ユンソクの想いは強烈である。
が、思いが極まり彼は行き過ぎた。
 
1検事、マスコミ、警察 VS 全斗煥大統領、軍部、治安本部。
という対立構図だが、勝負が決するに至る過程はどうにも出来レースっぽい。
検事が資料を記者に渡してすむ問題なのだろうか…と思えてしまう。
もっと上のほうのパワーゲームがあったのではと思ってしまうのだ。
 
学生運動も描かれるのだが、トリガーが引かれたあとの拡散を担う役回りなのだから、次元の違うものを並立させた感がぬぐえないのだ。
徒に情緒に傾倒しすぎに思えた。
 
軍事独裁反共主義の連携が自由主義の弾圧へ繋がるメカニズムが明晰でないままヒロイック酔いどれ検事を配して対立軸に据えるので底浅な感じがするし、並行する学生運動ノンポリ少女の視点では踏み込めない。力作だが詰め込みすぎだし情に流れすぎと思う。(cinemascape)