男の痰壺

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夜明け

★★★ 2019年1月19日(土) シネリーブル梅田4
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そもそもに、川っぺりで倒れていた青年を見つけて家に連れ帰って介抱しようとするってのに違和感。
現代の日本で普通はそうしない。
119番にTELするだろう。
まあ、それは訳があったってことなのだが。
 
この映画は万事につけて、そういった舌足らずな、ある意味では横柄さを感じる。
途中、加速する男の青年に対する思い入れが露骨になるにつれて、これはもしやホラーか?という疑念さえ生まれそうであった。
確かに、この新人監督の師匠だという西川美和の映画は、ときにそういった不穏さを垣間見せるのだが。
 
青年が、からめとられる状況に迎合しようとするのも一貫性がない。
なぜ男の死んだ息子に似せて髪を金髪に染めるのか。
そういう振り子のように揺れ動く心の機微は描き切れていない。
 
ろくすぽ何もない東京近郊の寂れた雰囲気。
居酒屋の店長と店員の確執。
作業場で行われる結婚披露宴。
そういった、リアルな場の構築は冴えている。
演出力はあると思うのだが、脚本段階の書き込み不足がいかんともしがたいのだ。
 
男は何故に行き倒れ青年にそこまで執着するのかと青年は何故ひととき迎合する素振りを見せたかが全く描き切れてないのでホラーめいた予断を持ってしまう。脚本が舌足らずなのだが演出的に都市近郊の行き場ない閉塞を描いてリアルな場を構築する力量は感じた。(cinemascape)