男の痰壺

映画の感想中心です

海獣の子供

★★★★ 2019年6月19日(水) TOHOシネマズ梅田4
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原作未読です。
 
女子高生の日常のミニマムな悩みとかから始まった物語が、どんどん流転・漂流して、クライマックスは「2001年」のスターゲイトのような神秘・宗教的世界に突入し、そして再び日常に戻る。
この流れは好きである。
しかし、あまりに様々な要因を切り取って表象だけを呈示するので訳わからんということにもなる。
 
主人公と母の関係性。
母が家で飲んだくれていて、仕事も休んでいるということはわかる。
しかし、何故かってのは微かにしかわからない。
 
2人の少年の身体特性と超上能力と取り巻く世界的な探査組織と目的。
利権が絡んでいるのはわかるのだが、そして、ある何かが起こるときを待っているらしいのもわかる。
しかし、この組織の話は、途中で放逐される。
 
ふるだけふっといて回収しないネタのオンパレード。
というより、大風呂敷広げまくって収拾がつかなくなった?
ってのを、鯨に飲み込まれてのスターゲイトで逃げた?
 
最初の方で、主人公の肩にとまるカミキリムシから始まって、この映画はすさまじい物量の素晴らしくも精緻な生物たちであふれかえっている。
この共生感は、ちょっと「ナウシカ」に似てるかもしれない。
 
投げた部分のかわりに、主人公の心の揺らぎからは焦点ははずさなかった。
プロローグとエピローグは、実にきれいに呼応している。
そして、中盤の雨中を自転車で駆け抜けるシーン。
雨雲を追い越してパッと視界が晴れる瞬間。
心の移ろいと映画的視覚がシンクロした稀有な快楽をもたらす名シーンだと思う。
 
何処までおっ広げるの展開も『2001』スターゲイト擬きで煙に巻きミニマムな日常に回帰するのが据り良い。生物たちの精緻描写が半端なくコクがあり『ナウシカ』的共生世界を担保できたのも良。雨雲を追い越せば晴れ間が来る。心の持ちようで世界は変わる。(cinemascape)