男の痰壺

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COLD WAR あの歌、2つの心

★★★★ 2019年7月6日(土) テアトル梅田2
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男と女の腐れ縁を描いたもので、正直それ以上でも以下でもない気がしないでもない。
何年もにわたる、ついたり離れたりの変遷。
そこに2人の商売柄、いろんな歌曲が挿入される。
って「ラ・ラ・ランド」をちょっと連想したりもした。
 
そうは言っても、これは米ソ冷戦下のポーランドが舞台なので、正直そんなにお気楽な状況でもない。
場合によっては命にかかわることにもなる。
ただ、その状況を殊更フィーチャーしたようにも見えないのだ。
けっこう、亡命とかも簡単にできたように見える。
 
むしろ、意外なことに物語を起動させるのは、ポーランドに対する思い。
ヒロインが2度にわたり男のもとを去る。
1度目は亡命に誘われて男との待ち合わせ場所に結局、彼女は行かない。
2度目は公演で行ったパリで男の元に残り同棲を始めるが、結局、彼女はポーランドに帰ってしまう。
このへんの止むに已まれぬ心情を映画はピックアップしない。
寧ろ、彼女自身も自覚してない想いのように見える。
 
この監督の前作「イーダ」に続くモノクロ映像だが、構図の表現主義的なこだわりは減衰している。
そのへんも、多少物足りなかった。
ラストの風に1点加点する。
 
再会と別離を繰り返す男と女の腐れ縁編年記だが、ちょっと見クールな刹那主義に見える彼女が断ち難い祖国への想いに絡め取られているあたり冷戦下の東側の真実を照射する。行き場を失い朽ちる2人の痕跡を一陣の風が拭い去る。それが歴史だとでも言うように。(inemascape)