男の痰壺

映画の感想中心です

天気の子

★★★★ 2019年7月24日(水) TOHOシネマズ梅田1
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けっきょく家出はなんやったんやとか
銃を拾ったにしては扱い軽いーとか
中空に浮かぶ水の塊って何とか
まあ、ネタふっただけみたいな感がないでもないのだが、そこはお得意の日常の細緻な切り取りが相変わらずめっぽう素晴らしいので相殺してもお釣がきそうだが。
それでも、これは前作「君の名は」にくらべて劣ると思われるのだ。
 
両作とも、映画内で大きなカタストロフィが起こる。
隕石の衝突による都市消失と気候変動による都市水没。
なのだが、前作は主人公たちは受け身だったのに対して今作はそのカタストロフィへの能動的関与が問われる。
まあ、たいへんな大風呂敷広げちまったよなあって感じであって、
それが、神社の鳥居くぐって晴れ女になって、人柱になって世界を救う。
って、それだけ?って感じで、まあ逆に言うとスゲー開き直りであって、そんなこっぱずかしいお話は、
まさに向かうとこ敵なし状態の新海先生にしかできない芸当なんだわさとも思うのだ。
 
それでも、やっぱ人柱になるって点が、彼女が決意する段階でどんだけの天変地異が起こってるか不明ってのが、作劇的にはダメなんじゃないか。
これでは、自己犠牲と自己愛のはざまでの葛藤が浮かび上がりきれない。
 
雨が永遠に降り続いて、世界が徐々に水没する…くらいなら、俺と彼女がハッピーなら知んなーい
ですまされるけど、何万人もがもだえ苦しみ死んでゆく世界が現出したときどうなんやろか。
そこまで踏み込んでこそじゃないかと思うんですが。
 
猥雑な都市空間の細部に詩を見い出す圧倒的な連鎖に、撒いた小ネタが全~部ハッタリでしたのギャフンは一応には糊塗される。しかし、肝心の自己犠牲と自己愛の相克が後付け的で懊悩が足りないし人死に抜きにはリアルとシンクロしない。踏み込んで欲しかった。(cinemascape)