男の痰壺

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幸福の設計

★★★★ 2020年1月12日(日) シネリーブル梅田4

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ジャック・ベッケルは「穴」は良作、「モンパルナスの灯」は普通くらいの評価しかもっておらず、先日見た「怪盗ルパン」が凡作だったのでどうもなあとも感じていたが、この3作は後期のものであり、ヌーベルバーグ一派が評価したのは前期だそうです。

 

これは、確かに良かった。

びっくりしたのが展開と描写のスピードで、あのもっさりした「ルパン」が嘘みたいに弾んでいる。

内容はほとんど掌話といっていい。取るに足らない物語で、前半が女房がもてて亭主が焼きもちする話と、後半が宝くじ騒動。

ただ、100ある背景の10だけ抽出しました的な豊饒な状況の厚みと豊富なレトリックに彩られており相当に練りあげられたもんであることがわかるのだ。

出てくる豊富な人物群が頻繁に錯綜して、なおかつそれらが後方で連関する。ある意味で幾何学的な発想を思わせるタペストリーだ。

 

女房は、前半と宝くじが当たるまでは、結構に気きつく自己主張もする。

しかし、亭主が窮地に陥ったと知ると、自分を抑えてでも亭主に寄り添おうとする。

いやあ、女房の鏡であります。あやかりたいもんです。

であるから、急転直下に事がおさまり彼らが幸せになっても、彼女のために心の底から喜べるんですなあ。

「けっ、宝くじ見つからんかったらよかったのに、ハッピーになりやがって、けったくそわるー」なんて気持ちは全くおこりません。ほんまです。

 

他愛無い掌話なのだが、数多の後景を圧縮した厚みのなかを物語が疾走する。職場・隣人・行きつけパブなどの人物群が幾何学模様のタペストリーのように錯綜する。そんななか浮かび上がるのは窮地のときこそ愛は試されるの理なのだ。いい奥さんで良かったっす。(cinrmascape)

 

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