男の痰壺

映画の感想中心です

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

映画2017

晩春の頃だったと思う。 CinemaScapeというサイトのコメンテーターと飲んだ。 おっさんばっかり4人。色気もくそもないのだが、一種の腐れ縁である。 そのときの話だ。 「けにろんさん、あんた、近頃5点ばっかりつけてるけど、ちょっとおかしい…

日本のいちばん長い日

★★★ 2015年8月9日(日) MOVIXあまがさき5 構図と編集リズムによりドラマのエモーションを高める作為は前半に関しては一応の成果を見せ、ミクロに集約された三者の思いの錯綜は新鮮でさえある。ならば将校の叛乱は寧ろ描かないくらいでよかった。後半は流さ…

ロジャー・ムーア 冒険野郎

★★ 1979年4月29日(日) ダイニチ伊丹 あくまで悪者はドイツで象牙の密猟してても米英サイドなら良しとされるらしい。黒塗りの黒人扮装を含めて地雷コード踏みまくりだがそういう時代だった。C調なムーアと飄然としたマービンのコンビがそれなりに苛烈で過酷…

ナインイレヴン 運命を分けた日

★★★★ 2017年12月16日(土) 新世界国際劇場 今更感がある題材に今更感のある役者。 食指がわかない映画なのだが、存外に良い。 それは、9・11という題材におんぶにだっこじゃないからだ。 ビル内のエレベーターに閉じ込められた5人の確執は、よくあるヒ…

この国の空

★★★★★ 2015年8月11日(火) テアトル梅田1 一貫して重低音で流れ続けるような戦時下の抑圧。こういう演出は制圧的な統御下でしか為し得ぬものに思える。声を押し殺したパッションの臨界域での発露は綺麗ごとじゃない。ど真ん中を射るモノローグ「私の戦争」…

勝手にしやがれ

★★★ 1979年6月3日(日) 大毎地下劇場 1983年5月27日(金) 三番街シネマ2 手持ちノーライトカメラに時間軸無視の繋ぎや既成曲の断片使用に数多の引用など全てはここから始まった起源的価値を剥ぎ取り残るのは青臭い男女の痴話。先駆者は常に陳腐化するの例えか…

オリエント急行殺人事件

★★★ 2017年12月10日(日) MOVIXあまがさき5 原作未読なので、どうしたって1974年版の映画と比較してしまう。 しかも、俺は見たのが数年前なのであった(午前10時の映画館)。 まず、ポワロだが、フィニーの作り込んだ造形からすれば凡庸。 「ナ…

リアル鬼ごっこ

★★★ 2015年7月19日(日) 大阪ステーションシティシネマ4 『自殺サークル』サイド園子温の結晶形で全篇5割以上をドローン撮影に依ると思しき実験の遣り放題も概ね好感。悪夢のような不条理展開が続くが言わずもがなの終盤は蛇足だし純度を低める。特筆はト…

家族の肖像

★★★ 1979年6月3日(日) 大毎地下劇場 『テオレマ』倒置形のような設定だが悠々自適引き籠り老人に対しての共感がヴィスコンティに内在する以上ドラマ性も緩くなる。『勇者』なみの更なる悪意と過激が欲しいところだし屋内美術に魅力が無いので『ベニス』のよ…

熱砂の秘密

★★★★ 2017年12月16日(土) プラネットスタジオプラス1 ビリー・ワイルダーの初期作だが、ほとんど言及されていない作品と思う。 でも、すごく良い出来だった。 何といっても脚本が秀でており、全く緩まない。 ルビッチ直系の共闘者チャールズ・ブラケット…

ホーンズ 容疑者と告白の角

★★★★ 2015年8月11日(火) 新世界国際劇場 ブラックコメディ的体裁だが、そのシニカルで人間不信の塊みたいな展開の果てから俄かに沸き上がった純正ロマンティシズムに不意打ちされる。出色の構成だし細部のギャグも冴えている。越境の果ての終盤の呵責の無…

あゝ野麦峠

★★★ 1979年7月15日(日) 伊丹グリーン劇場 女工哀史的な情緒がだだ漏れる被虐もあるが一方で優良工女の争いがしのぶVS美枝子の両極激突に表象されるのが骨太で女性讃歌へと接続される。製糸工場のセットは健闘だが美学的昇華には至らぬがストーリーテラー薩…

★★★ 2017年12月9日(土) シネリーブル梅田4 ある意味、問題作である。 なんじゃこりゃという腑抜けた部分と、めっちゃ力入った部分が混在する。 何故こいつ等がこうなったかっていう釈明は一切ない。 だから、クソ人間となった現状だけが提示される。 そん…

TOMORROW 明日

★★★★ 2015年8月23日(日) シネヌーヴォ 定められた結末へ向かい刻まれる時間を煽情的にフィーチャーすることない黒木の良識を良しとしつつ、だが尚コンセプトは明け透けだ。しかし、それでも気持ちが締め付けられるのは進行するドラマの慎まし過ぎる希望。…

野生の証明

★★★ 1979年4月2日(金) 伊丹ローズ劇場 ひろ子にガン無視されて不憫でさえある健さんだが斧振り回し脳天叩き割る蛮性と寡黙な礼節とのアンビバレンツが笑える。自衛隊特殊部隊と地方都市のフィクサーと予知能力を持つ少女…出鱈目で過剰で魅力的な設定だが全て…

ハネムーン・キラーズ

★★★★ 2017年12月16日(土) 新世界国際劇場 犯行に及ぶ際、心地よいくらいに感情的な足跡は全く描かれないし究明しようともしてない。 迷いとか躊躇とか罪悪感とか、そういうものだが、かといって冷酷を強調しようとの意図もなさそう。 シークェンスからシー…

野火

★★★★ 2015年8月26日(水) シネリーブル梅田1 南方の亜熱帯樹林がデジタルでクリアに捉えられ時に限りなく美しく戦線から離脱した孤絶感を弥増させる。軽い擦過音が聞こえた直後に人体破壊がもたらされる空からの掃射など細部が良い。野火や人肉食の扱いは…

未来は我らのもの ドイツ革命とリープクネヒト

★ 1978年3月26日(日) SABホール 共産圏にあった東独時代の作品なので教条的革命礼賛と愚直で面白味のない人間描写が鼻につく。しかも、局地的・限定的な内容でドイツ革命についてのある程度の事前学習がないと物語の進捗は理解困難。為にするプロパガンダ…

探偵はBARにいる3

★★★ 2017年12月7日(木) 梅田ブルク7シアター1 シリーズ前2作は未見。 なんで見に行ったかというと、北川景子ちゃんが出てるから。 ファンなんっす。 まあ、木偶の坊のようなツンデレ演技しか演ってない最近の彼女にしてはテンション高めの演技ではあり…

ジュラシック・ワールド

★★★★ 2015年8月22日(土) TOHOシネマズ梅田1 草食系をほぼオミットし新種レックスとラプトルに物語を負わせたのが良い。人間が両者の剣呑な狡猾に翻弄されまくるところにトリッキーで被虐的エモーションが宿るのだ。隔離された筈の脅威は一瞬にしてこちら…

ローマに散る

★★★★ 1979年4月22日(日) 大毎地下劇場 『Z』をクタールの映画だと言うのと等質に、これはサンティスの映画だと言ってもいい。それ位の撮影の濃度がある。元最高裁長官宅での軍警察の介入目撃は、蛙の穴を掘ってたらデカい蛇が出たとも言うべきエキサイティ…

周遊する蒸気船

★★★ 2017年12月16日(土) オラネットスタジオプラス1 甥っ子が彼女を連れてきたのだが、その甥っ子が警察に捕まってしまう。 そんで、若い女の子と2人っきりの生活。 亡妻の服を着せて2人並んで町を歩く。 ウキウキ…。 とまあ、評判の高い映画なんですが…

きみはいい子

★★★★ 2015年8月11日(火) テアトル梅田1 虐待は継承され自己愛が強すぎる親は新たな虐待を産み又、教師や同級の親を排撃し続けるだろう。独居老人は社会性を失い障害を持つ子の親も又居所がない。時代に蔓延する唾棄すべき事象をしかし呉美保は全肯定で捕…

ファール・プレイ

★★★ 1979年7月21日(土) 大毎地下劇場 ハリウッド王道のロマンティック・コメディ・スリラーだが、エレガンスが足りずもさく、スリルを醸すには下手で、ゴールディのコメディエンヌは買うがチェイスは鈍重な木偶の坊だ。ダドリー・ムーアの異常だけ突出してい…

エンドレス・ポエトリー

★★★★ 2017年12月9日(土) シネリーブル梅田4 「リアリティのダンス」の続編で、少年期を題材とした前作に対して、こちらは青年期が語られる。 まあ、感想を一言で言えば、「この爺さん、どんだけ自分の親爺が嫌いやってん!」ということであります。 そう…

ロマンス

★★★★ 2015年9月5日(土) シネリーブル梅田2 自分探しとかではなく失われたと思い込んでた過去を見つける旅路である点に於いて『四十九日』と通底すると言うかこれしかないんかとさえ思わせたが、臨界線上の男を描く腰の座りが優子の「ま、いいか」的開き直…

エロス+虐殺

★★★ 1979年9月2日(日) SABホール 時制の錯綜にせよハイキーなモノクロ映像の徹底にせよ一貫した手法へのポリシーの下で成されたという拘りは感じるが、高名な大正のアナーキストを描いて男女の愛憎に終始するのでは方途として使われた者は浮かばれないの…

スター・ウォーズ 最後のジェダイ

★★★★★ 2017年12月17日(日) MOVIXあまがさき5 俺はスター・ウォーズの熱心なファンではない。 であるから、この評価が真っ二つに割れている新作を正しく評価しているのかどうかわからない。 でも、これは「帝国の逆襲」に次ぐ出来だと感じた。 何より…

紙屋悦子の青春

★★★★★ 2015年8月22日(土) シネヌーヴォ 何十年に及ぶ日々を、あの数か月の彼奴があの人が残したものを心の中で反芻しながら生きてきたのだということを、永遠かとも思える無為な病院屋上の時間が反映画的故にこそ表すのだという黒木の達観と確信。その…

張込み

★★★★ 1979年8月25日(土) SABホール 精緻な設計図を基に徹底した撮影現場のコンテクストを描いて臨んだと思しき一点一画を忽せにしない職人仕事の趣がある。拘りを感じさせるアバンタイトルの異様な長さが意識の程を表出。しかし、設計図を突き破るものも…