男の痰壺

映画の感想中心です

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ビクター/ビクトリア

★★★★ 1983年10月23日(日) 新世界国際 全く期待せずに、こういうのを見たときに心底アメリカ映画は良いなあ…と思わせる…そういう作品。てらいが無く泥臭い笑いを振りまく一方でミュージカルの伝統というものを思わずにいられないセンスの良い振り付け。(cinem…

わたしを離さないで

★★★★ 2011年10月22日(土) 新世界国際劇場 従容として受け入れることを彼ら彼女らに強いる享楽の世界の存在は隣接しつつも余りに遠いという隔絶の絶対性を堅持した妥協のない演出。単線構造は悪くもないのだが、しかし思うのだ。鎮魂だけが回答なのかと。反…

無理心中 日本の夏

★★★ 1983年12月11日(日) 伊丹ローズ劇場 自分が誰かに殺されることにこそ意味が或るという机上の論理的モチーフを、これ又記号化されたアナーキスト達の中に投げ込み禅問答を繰り広げる。記号が記号に留まるので突き抜けないが方法論としては解る。イメージ…

THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女

★★★★ 2020年11月26日(木) TOHOシネマズ梅田6 香港を主舞台とした中国映画って点で見るものにはどうしたってある種のバイアスかかかる。民主化を弾圧しとる手前らが何いけシャーシャーと素知らぬ顔して撮っとるんじゃってことなんですが、しかし、そこ…

ゴーストライター

★★★★ 2011年10月8日(土) シネリーブル梅田2 前半の元英首相が逗留する米国東岸の別邸での展開が図抜けていて、複数の人物の出入りと窓で隔絶された屋内外の舞台設定の錯綜を操るポランスキーの技は世界遺産級。だが中盤以降は展開に演出がやや従属か。不…

みゆき

★★★★ 1983年9月23日(金) 伊丹グリーン劇場 可愛い女の子と仕方なく同居し煮え切らない甲斐性なしでも何故か女の子にモテモテという露骨すぎる夢物語をお仕着せ企画であろうが何とかしようとしたとき希に映画は歪な輝きを獲得する。映画史的(?)に相米のデ…

ミクロの決死圏

★★★ 2011年10月22日(土) TOHOシネマズ梅田10 ハリウッドメソッドの残滓はあるが、にしても驚きの即物感である。情緒や説明は廃して切り込む快感こそが先鞭であった。そして、省略の妙が最高に活かされるラスト5分の畳み掛け。美術的な鮮度落ちはや…

映画年間概観 2005

2005年を映画で回顧する 運命論とか占いの類とかは信じたくもないが、一種のバイオリズムというのは間違いなくあると思う。上がり続ける株価は有り得なく、増え続ける人口も有り得ないわけで、どこかで下降局面に移行する。問題は下降局面を終結させる努…

天城越え

★★★ 1983年11月16日(水) 伊丹ローズ劇場 加藤泰的な湿った思い入れが過剰に出て退くところと、旧態的撮影所システムの仕事にマッチして奥行きと厚みをもたらすところが混在する。ただ、そういう微妙な均衡を現代シーンの安い書割セットと拙い渡瀬の老けメイ…

ミッション:8ミニッツ

★★★★ 2011年11月6日(日) MOVIXあまがさき4 さして巧くもない反復のギミックが中段で放棄され、物語が別側面を見せ始めたときに、ダンカン・ジョーンズの前作同様の遺棄されしものへの慈しみが浮上する。残留思念の永遠とパラレルな現世に届く一抹の…

秋刀魚の味

★★★★ 1983年12月7日(水) ビック映劇 小津晩年の本流ホームドラマは『秋日和』で事実上終焉したのだろう。演出技法は一貫しているが腰の据わったテーマを扱ったものとも思えない。滋味があるとも言えるが拡散し徹し切れていない感じが残る。居酒屋の軍艦マー…

映画年間概観 2004

映画で回顧する2004年 同じことの繰り返しに見える日々の移ろいも実は微細な事柄が積もってゆき、総和として形成されたものは少なからぬ変化を年度にもたらすであろう。去年と同じ今年はないし、今年と同じ来年はない。一昨年に180本を超えた映画館通…

恋の罪

★★★ 2011年11月12日(土) シネリーブル梅田1 過去のトラウマに解を求めるようなことをやっては後退としか思えないし、禍々しいアナーキズムも所詮はバブル前のロマンポルノの形骸的トレースに見える。堕ちる堕ちないのグダグダが水野のドラマに侵食もしな…

アウトサイダー

★★★ 1983年9月9日(金) 梅田スカラ座 ミュージカル・暗黒街・戦争とコッポラは意図的にオーソドックスなジャンルを踏襲してきたのだから、この不良ものの内容的陳腐さには確信的だった筈。なのに『ワン・フロム』の人工世界の形骸を引きずり反動からか描法に…

デイブレイカー

★★★ 2011年10月22日(土) 新世界国際劇場 人間飼育やサブサイダーとか禍々しくなりそうな要素もあるにはあるが、根本設定がギャグとしか思えないので中和され半ちくである。で、又生真面目にご丁寧であるのもかなわん気がする。後半の非効率な人間化への食…

悪魔のささやき アルティメット

なに憂鬱そうな顔してるのよ。 またぞろ重傷者が増えてきて医療崩壊しそうで怖いって、バーカなこと言ってんじゃないわよ、なにさ。 あなた見たことあるの、その医療崩壊とやらのリアル。ないでしょう、みーんなないわけよ。重症者とか死亡者の数だけ肥大化…

隣の女

★★★ 1983年9月5日(日) ビック映劇 焼け木杭に火がついたあと主体がシーソーのように入れ替わる作劇のドラマトゥルギーは十全だが、何せアルダンもドパルデューも茫洋として切れがなく、近所のおっさんおばはんの逢瀬みたいでどうでもいい感が拭えず入れ込め…

弥太郎笠

★★★★★ 2011年11月26日(土) 日劇会館 ダイジェスト感は拭えないものの、明朗で真摯な錦之助キャラが十全に炸裂し終始快感神経が心地よく刺激される。マキノ演出も闊達で流麗。丘との再会の場では溜めの効き具合に惚れ惚れ。東や千秋らが要所で絡む按配も粋…

帰って来たヨッパライ

★★★★ 1983年12月17日(日) 伊丹ローズ劇場 軽佻が底知れぬ痛みに根ざす『地下鉄のザジ』的スラプスティックをクタール的ポップな色使いとゴダール的コラージュで彩る。全きトレースだとしても大島なりの才気ほとばしった希有作。バカ話にも『絞死刑』を経た者…

ホモ・サピエンスの涙

★★★★ 2020年11月20日(金) シネリーブル梅田1 ロイ・アンダーソンの映画は、前作「さよなら人類」を見ただけだが、毎回、こんな感じなんやろなと思わせる。ちょっとした小噺というかコントというかの集積で、しかもオチは無い。 2つ目のエピソードで、昔…

コンテイジョン

★★★ 2011年11月12日(土) 大阪ステーションシティシネマ3 デイモンの遣り切れなさやウィンスレットの遣る瀬無さといった多くの感情の行き場に帳尻をつけぬことで怜悧に状況の混沌を描くソダーバーグの群像処理は買うが、収束への過程が端折り過ぎで尻すぼ…

この子を残して

★★ 1983年9月18日(日) 伊丹ローズ劇場 幼子を残し死にゆく親の手記ならば木下自家籠中の題材だろうし、そこに絞ればいいのに大時代なメッセージ性を加味してバラバラ。大体、永井博士は被爆で死んだのではないのだから根本的に構成に齟齬を来している。原爆…

ラビット・ホール

★★★★★ 2011年11月12日(土) シネリーブル梅田2 失われた絆のドラマとして痛々しさが横溢し、実家や集会といった作劇上の付加要因も完璧に機能する。だが、真に斬新なのは加害者少年の在り方で、その錯綜する想いの絡まり合いが解れて提される微かな光明は…

映画年間概観 2003

回顧2003-映画- 数えてみれば今年になって映画館で見た映画が103本。去年が180本超であったのだから激減した。一重に金が無くなり気力が減退したということなのだろう。思い出せば去年はオールナイトの3本立てによく行って、そこで本数を稼いで…

幻魔大戦

★★ 1983年10月23日(日) 新世界国際 初期限定で平井和正を信奉することに吝かではなく石森のアプローチも同線上に沿ったもの。つまり異形のものの越境を経た孤絶感。しかし、大友は浪花節を拒否して無機的な別次元を志向する。りんたろう如きに巨頭達の采配が…

ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド

★★★ 2011年11月26日(土) 大阪ステーションシティシネマ8 お庭の花壇のお花の陰からヌボーっと現れるジョージにスコセッシの気持ちは集約されている。肩入れし切れない取り留めの無さ。期待した快楽の編集リズムは無く、ポールやクラプトンとの確執も突っ…

秋日和

★★★★ 1983年12月16日(金) ビック映劇 1992年2月16日(日) 日劇シネマ 『晩春』から10年の歳月を経て一巡した原節子の役回りが物語構造と同期した侘びしさが胸を打つ。3人組サラリーマン親爺のコンビネーションと岡田茉莉子の艶も完璧な配合度合いだが、結…

映画年間概観 2002

ベスト・テン 年の瀬も押し迫り残りの日々も少なくなって参りましたので2002年公開映画ベストテン。〔邦画〕①OUT②たそがれ清兵衛③助太刀屋助六④仄暗い水の底から⑤とらばいゆ⑥実録・安藤昇侠道伝 烈火⑦青い春⑧突入せよ! 「あさま山荘」事件⑨金融破滅…

不良番長 やらずぶったくり

★★★ 2011年11月26日(土) 日劇会館 お嬢学園の良家の子女も口八丁手八丁で瞬く間にスッポンッポンのオッパイ丸出しにされてしまうあたり不良番長も憎めないのであるが、ド田舎舞台の間延びしたユルさが締りない。乱闘でのマグロ攻撃程度の寒さでは足りない…

時をかける少女

★★★ 1983年9月27日(火) 三宮東映プラザ 『ねらわれた学園』でのオプティカルの極北と反動とも言える『転校生』での情緒的な思春期描写への傾倒を経て両者をバランス良く融和させ得た。この世界の中で完成されてるんだとは思うが大して驚きもない時空ネタ。一…