男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【つ】

罪と悪

★★★ 2024年2月5日(月) 大阪ステーションシティシネマ12 和製「ミスティック・リバー」と言われてる本作ですが、そもそも少年時代のトラウマが大人になってから何某かのドラマを起動するってのは、相当にやり尽くされた大枠であり、そんな袋に何詰め込ん…

★★★ 2023年10月21日(土) Tジョイ梅田3 相模原事件から着想を得た原作を更に石井裕也が脚色したものらしい。原作未読です。で、やっぱ本質には迫り得ていないと思いました。 俺は、あの事件を題材に小説なり映画を作るのであれば2つの切り口しかないと思…

土を喰らう十二ヵ月

★★★★ 2023年3月21日(火) シネヌーヴォ 昨年のキネ旬の主演男優賞を沢田研二が受賞したが、対象作品がベスト10内に入ってないのがレアなケースやなと思っておりました。まあ、功労賞みたいなもんかと。 しかし、本作の彼は年相応の滋味みたいなのを醸し出…

追悼のざわめき

★★★★ 1999年5月23日(日) シネヌーヴォ梅田 白黒16ミリで延々と続くハイテンションのグロは振り切れて世界が裏返るでもなく閉塞世界の地獄に沈殿する。モラリズムの破壊が掟破りにコードを超える為だ。結局その越境度合いの凄まじさに諦観するだけ。蹂躙さ…

ツイスター

★★★★ 1996年6月29日(土) 徳山国際劇場 サスペンスを盛り上げることも感動を誘発するドラマトゥルギーも何もかも放棄し、ひたすらに竜巻の迫真性と画づらを追求した前代未聞の珍奇作。撮影監督出身のヤン・デ・ボンの遣りたい放題企画が『スピード』成功の余…

妻は告白する

★★★★ 2001年1月20日(土) テアトル梅田2 通常の増村映画の若尾扮する論理に立脚したクールなキャラとは正逆な女主人公なのだが、それはそれで徹底的に押しまくる増村演出は良しとしても、冒頭の肝心な山岳描写がこうも陳腐では興醒めだ。果てまで行きつく加…

追撃者

★★ 2001年5月31日(木) トビタシネマ 香港ノワール的ケレン味たっぷりのスタイルに耽溺するのは結構だが、ともかく、いつまでたっても一向に盛り上がらない。アンチ商業イズムの結果そうなってるのではなく頭が悪いだけみたい。マイケル・ケインなんて何しに…

罪と罰 ドタマかちわったろかの巻

★★★ 1994年3月20日(日) ホクテンザ1 全編手持ちカメラと思しく照明もしてるのかしてないのか解らない暗さでお手軽もいいとこなのだが、悪夢から吹っ切れようとしていたのだろう。俺はそういう人間の真摯に足掻く所業を支持したい。成り切れなかった『地下鉄…

月はどっちに出ている

★★★★★ 1993年10月31日(日) 第七藝術劇場 バブル終焉期のダイナミズムの残り香の中を主人公は無自覚に泳ぎ続ける。60年退廃ローマの『甘い生活』マルチェロの如くに。行き着けば僅かにせよ希望が見えるかも知れない。鄭と藤澤という新たな共闘者を得た崔の…

追想

★★★★ 1992年9月26日(土) 毎日文化ホール 嘘から出た真的なロマンティック大講談であり絢爛なハッタリ絵巻で、素材の秀逸は文句ない上に、バーグマン復帰が絶妙にアナスタシアとリンクする天恵な配役。これでダメなら余っ程だが水準スタッフが無難に乗り切る…

ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の七日間

★★ 1992年10月10日(土) 新世界国際劇場 ボウイもマクラクレンもちょこっとでるだけで安手のTVドラマの如き平板な話が延々と続くとあっては詐欺だと言われても仕方なかろう。TVシリーズは未見だが劇場版と銘打つにしては気合い無さ過ぎ。シェリル・リーだ…

ツインズ・エフェクト

★★★ 2006年11月11日(土) トビタシネマ せっかく可愛い女の子2人が主演なのだから、もう少し身の丈に合った題材にして欲しかった。ヴァンパイヤ・ハンターってのが在り来たりで悩める吸血鬼ってのもかったるい。いやジリアンちゃん見るだけで充分なんです…

追憶

★★ 1988年12月11日(日) セントラル劇場 真性女性映画とは、こういうのを言うのかも。嘗て相手の幸せを思い身を退くのは男だったが、軟派レッドフォードの為に身を退くのはバーブラの方。そして、それがバーブラだから成立し得るという皮相な2重構造が女性観…

月に囚われた男

★★★★ 2010年4月26日(月) 梅田ガーデンシネマ1 一見チャチい月面自走の資源採掘機の廃出する粉塵飛沫が良く見入れば半重力で舞う様の幽玄な詠嘆に魅せられる。『ブレードランナー』から伸延されたテーゼを『サイレント・ランニング』な侘びと『アウトラン…

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

★★★ 2011年3月12日(土) トビタシネマ 序盤のホテルでの襲撃シークェンスのスタティックな構図とローリングするカメラ使いに期するが、又かの仲良し親爺どもの青春遊戯のリフレインに心折れる。100年前の開拓時代の信義則を信奉するジョニー・トーにピエ…

冷たい熱帯魚

★★★★★ 2011年2月19日(土) シネリーブル梅田1 正直黒沢・神楽坂・梶原のミニスカ揃い踏みな女趣味だけで充分堪能してしまうが、この世界構築への確信的腹の据わり方には陶然とする。ダメなもんは破壊し尽くせというアナーキーな主張を一転ピンキーバイオレ…

次郎長青春篇 つっぱり清水港

★★★ 1983年1月4日(火) 伊丹ローズ劇場 手垢のついた題材を手垢のついた役者を揃えて賑々しくリニューアルというアイデアは正月映画らしくて悪くない。しかし、何がつっぱりなのか解らん坊ちゃん中村主演ではカラーワイドの画面をはみ出すような躍動感は生じ…

対馬丸 さようなら沖縄

★★★★ 1983年6月10日(金) 緑ヶ丘小学校講堂 日本アニメの基底を形成する人々が、絶対的確信のもと残した意義ある結晶。芝山的キャラが形成する安寧世界が一転して地獄絵図に突入する衝撃。その沈没シーンは『タイタニック』も真っ青。極限状態の人々を気負い…

ツリー・オブ・ライフ

★★★★★ 2011年8月27日(土) 梅田ブルク7シアター5 頑固親爺に反撥した程度の問題を兄弟の死は脇に置いて大宇宙の俯瞰からDNAの極微細への往還と太古から現在への時間の流転でベルイマンもどきに神実存を問いフェリーニ的祝祭へ至る。マリックはとんでも…

ツーリスト

★★★ 2011年8月13日(土) 新世界国際劇場 刺激度ゼロの展開ではあるが、世の中を睥睨するかのようなアンジーのウォーキングと太鼓持ち宜しいジョニーのドM感が、意外に明媚なヴェネチアの風情と相俟って心地よい。ジャンルの欠落した間隙を埋める凡作として…

罪の声

★★★ 2020年11月7日(土) TOHOシネマズ梅田9 力作なんでしょうが、もひとつ熱くなれないのは何でやろとずっと考えてたんですが。 この映画と同様の「グリコ・森永事件」をモチーフにした作品で「レディ・ジョーカー」ってのがありました。当時、映画を…

月の輝く夜に

★★★★ 2012年7月13日(金) TOHOシネマズ梅田10 垣根低くサクサクと多幸感が横溢するが通り一遍とも言える恋愛錯綜。しかし、文字通り揃い踏みな終局場でのジュイソン演出の畳み掛け。その悲喜交々の視線交錯の停滞をデュカキスの真情吐露が切り裂く。…

終の信託

★★★★★ 2012年10月27日(土) TOHOシネマズ梅田1 ブレッソンとまでは言わぬがシャブロル程度の峻厳は獲得しており、河川敷等アントニオーニ的ロケ選定も秀逸だ。作劇の均衡は廃され周防は言いたい事を言い切った。メソッドから遠い草刈の生身の少女性が…

ツィゴイネルワイゼン

★★★★★ 1981年2月23日(月) 三番街シネマ2 清順の内在に根差したらしき処から降って涌いたかの如くに確固たる認識で高等遊民を描いた昭和モダニズム世界が現出した点。それが、その技法上の破綻した個性と融合し模倣を許さぬ幽幻に到達した点。孤高の男の追…

罪の手ざわり

★★★★★ 2014年6月9日(月) シネリーブル梅田4 人が事に及ぶに当然あるであろう葛藤や躊躇は描かず、状況や空気を丁寧に描くことで演繹的にアプローチするのだが、結果、非情緒的なのに惻惻とした慈しみが横溢している。特に第3話が傑出し、大陸を流浪する…

つかのまの愛人

★★★★ 2018年10月18日(土) シネヌーヴォ フィリップ・ガレルの映画は初見。 だが、脚本ジャン=クロード・カリエール、撮影レナード・ベルタってのは弩級の大所である。 これは、ニンフォマニアの女を愛人にしちまった中年男の話。 男は大学教授で女は教え…

妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ

★★★★★ 2018年6月13日(水) 梅田ブルク7シアター6 思いをうまく伝えられない男と伝えてほしい女。 その遣る瀬無い機微を描くのは山田洋次の独壇場みたいだ。 俺は、実家に帰ってしまった妻のもとを訪れた夫とのやりとりを見ながら、「男はつらいよ 口笛を…

妻への家路

★★★★★ 2015年3月14日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 武侠映画を経由した藝謀が到達した序盤の編集ダイナミズム。駅でのクライマックスで一瞬の邂逅が劇的に刻印される。その余熱を引きずりつつ積み重ねる残りの月日が冷めゆく追憶の無為な消費に終わ…

月夜釜合戦

★★★★ 2018年5月6日(日) シネヌーヴォ 上映が始まり、16ミリフィルムの質感もだが、フィルム傷に堪らない郷愁を覚える。 朝の釜ヶ崎をチャリで走る主人公の女性を延々長回しで追う。 その、「場」の空気がダイレクトに伝わる臨場感はフィルムならではだと…

椿三十郎

★★★★★ 1978年11月5日(日) 伊丹ローズ劇場 1981年7月23日(木) 新世界東宝敷島 天才は枷がある方が逆説的に良い仕事が出来る。キャラの2次使用と東宝コマーシャリズムの制約は黒澤から本来無いものを奇跡的に引き出し遊び代を拡大した。そして、上乗せされた…