男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【おあ~おの】

おかしなおかしな大追跡

★★ 1976年5月16日(日) SABホール スラプスティックはシテュエーション・コメディより難易度が高いことをマザマザと見せつけられる。命を張らんばかりの芸のみが感銘を与え得るのに坊ちゃん嬢ちゃんのママゴト芸を頭でっかちが撮ったって小賢しさしか覚え…

男と女

★★★★ 1976年10月14日(金) ビック映劇 主役2人の微妙なエッジの効き加減がモノクロ画面とシンクロして甘さを緩衝。そのうえでルルーシュは砂糖菓子のようなボサノバを流し恰好つけまくりのソフトフォーカスをこれでもかと垂れ流し臆面もない。ヌーベルバーグ…

実録外伝 大阪電撃作戦

★★★ 2016年12月10日(土) 新世界東映 タイトルバックに未だスラムの残る70年代の大阪の空撮映像が出る。 脇雑な混沌に期待が深まるのだが、結局凡百の実録物と差異性はほぼ無い。 神戸の巨大組織の侵攻に長いものには巻かれるしかしゃあないんちゃうとい…

お父さんと伊藤さん

★★★★★ 2016年10月10日(月) 梅田ブルグ7シアター7 見栄や偏見や妬みといった感情に左右され俺たちは生きているのだが、そういう社会的関係性を削ぎ落としたっていいじゃないかとさえ思える我欲の無さが好ましいとか好ましくないとかでなく厳然と自然体で…

オオカミの家

★★★★ 2023年9月16日(土) シネリーブル梅田3 作者たちが今作品を作るにあたって決めた10のルールってのがあったらしく、その中で ・全てのものは「彫刻」として変化し得る・この映画はひとつの長回しで撮られる・カメラはコマとコマの間で決して止まるこ…

同じ下着を着るふたりの女

★★★★★ 023年7月13日(木) シネヌーヴォX 個人的にはネグレクトや虐待で子どもを死なせた親には同様のことをしてやればいいと思っている。食事を与えずに衰弱死させたら監禁して餓死の刑、熱湯浴びせて殺したら釜茹での刑、アホみたいに揺さぶって殺したら巨…

大いなる学生

★★ 1994年3月19日(土) 扇町ミュージアムスクエア オフビートで微妙な可笑しさと言えば聞こえがいいが所詮内輪受けの可笑しさであってメジャーを名乗るには遠い。大体、ロクな映像的カタルシスに至らなかった『アルファビル』を目指すってのが詰まら無さ過ぎ…

お受験

★★★ 1999年9月18日(土) 新劇会館シネマ2 お受験・リストラ・マラソンという3題噺で鮮度落ちの一色が肩力を抜いて仕上げたもので、何かにつけて詰めが甘いと思うのだが泣かされてしまったのも事実なのだ。言うことがまともで子役が良いからだろう。永ちゃん…

踊る大捜査線 THE MOVIE

★★★ 1999年8月7日(土) 祇園会館 平成無責任男的なキャラ付けと刑事ドラマがリミックスされたシリーズ根幹を鮮やかに提示したオープニング。そのオリジナルアイテムで自走すればいいのに『羊たち』をパクったような設定が安い。土台キョンキョンでは意外性だ…

大人の見る絵本 生れてはみたけれど

★★★★★ 1998年10月24日(土) 動物園前シネフェスタ2 焼跡の残滓も生々しく先行真っ暗な戦後不況真っ直中の日本でも、子供は純粋且つ強靱であり女房は優しく包容力があった。信じ難い理想郷を見たという驚きに充ちた驚愕の90分間。緩やかに移動するロングシ…

男はつらいよ 寅次郎紅の花

★★★ 1996年1月3日(水) テアトル徳山Ⅱ 根無草の寅の終焉に何らかの帳尻をつけようとしたのが間違っており、動けぬ渥美にリリー介添えで年寄の馴れ合い的辛気臭さが蔓延した。寧ろピチピチの若きマドンナで明るく陽気に何の予兆もなくプッツリ終わってほしかっ…

オーディション

★★★★ 2000年4月26日(水) 動物園前シネフェスタ2 彼女欲しさの嘘八百のオーディションがアンチモラルとしても男なら解らないことはないという微妙な匙加減。トラウマに囚われた不孝な過去を背負うとしても抑制の枷をぶっ飛ばす一大ショッカーの連続が柔な理…

おせっかいな天使

★★★ 1996年6月22日(土) 徳山市民館小ホール とりたてて美人でもハンサムでもない女と男たちが、何の計算もない転がり放題のストーリーを駆け抜けて行く。それも又人生とは言え乗り損なうと全く乗れない。心を病むということが過剰に喧伝される今、この軽やか…

男はつらいよ 寅次郎子守唄

★★★ 1996年9月7日(土) テアトル徳山Ⅲ 恋敵を物語の主線上に配置したバージョンとして後の『葛飾立志篇』『寅次郎恋愛塾』等に連なる系譜の初作だろう。しかし、十朱と寅の印象的な絡みが少なく印象が薄い。前半の九州の港町の風情が格別に良く、上條も好感の…

男はつらいよ 寅次郎恋愛塾

★★ 1996年9月7日(土) テアトル徳山Ⅲ 山田洋次の脳内思考で形成された現代的モテナイ君平田満が恐ろしく共感を拒否するキャラクターで、それに物語を乗っけようとした終盤の追っかけは無惨極まりない。加えて樋口はシリーズには全く馴染まない感じ。(cinemasc…

奥様ご用心

★★★★ 2001年3月15日(木) 動物園前シネフェスタ2 何がどうなって行くのか全く予想もつかない倫理観ゼロの展開が恐るべしだ。予想外な技巧サイドのデュビビエマターが全開する。アップのパワーがあるしローアングルもポイントごとに効果的に効いてる。そして…

弟切草

★ 2001年3月8日(木) 梅田劇場 デジタルフィルムを安易に使った画面が空前絶後の汚らしさで、ここまで来るとスクリーンで観る客を端から無視してるのだろう。何かを語りかけようとする努力さえ念頭に無いゲーマー世代の唾棄すべき自己中が膿の如くに滲み出る…

踊り子行状記

★★★ 2001年8月2日(木) テアトル梅田2 後にピンで傑作を連作した大映3大スターも初期には数多のプログラムピクチャーをこなしたからこそなのだろう。手馴れた演出での1時間半は飽きないが、TVの勃興に喰われるのも仕方ないとも思わせる。勝新はともかく…

男はつらいよ 拝啓車寅次郎様

★★★ 2001年11月15日(木) トビタ東映 ゴクミとのシリーズではウジウジと見ている者を大概いらつかせた満男であったが、寅の老化を間近で感じつつ負って立つ気概でもでたのか結構いい。牧瀬理穂も良い役に恵まれ好調。一方、寅は可愛そうな位影薄くかたせとの…

オテサーネク 妄想の子供

★★★ 2002年2月13日(水) シネリーブル梅田1 ブラックな風刺も効いて前半は良い。しかし、肝心のアニメーションを駆使した後半は凡百のスプラッターに限りなく近似していき、実写とアニメーションの食い合わせの難しさを感じさせる。子供の夜泣きに悩まされた…

押繪と旅する男

★ 1994年6月26日(日) 高槻セントラル 乱歩稀代の傑作幻想譚は凌雲閣という高所から遠眼鏡で遙か下方のからくり細工の押絵の美女を視るというマクロからミクロへの瞬時の空間飛躍がもたらす孤絶感こそが肝であるのに技量が無く、替わって安易な時制錯綜で茶を…

おいしい生活

★★★★ 2002年3月14日(木) 西灘劇場 語り口の抽斗を山ほど持つ男が「芸」を見せきる為に抑制を選択したのが心憎い。この2人の夫婦役者の掛け合いは何時間見てても飽きないだろう。至芸と言っていい。川下から拾い上げたウルマンやメイ。役者の選択が全てと言…

プライベートレッスン 青い体験

★★★★ 2002年4月28日(日)~29日(月) ホクテンザ2 省略ではなく安易で強引な展開がポルノだから仕方ないかと諦める前半をクリアすると予想外に真摯な脱トラウマ劇としての煌めきのようなものが浮かんで来て最後は感銘を覚えた。しかもポルノとして最高にそそ…

俺らのペンギン・ブーツ

★★★ 1994年8月13日(土) テアトル梅田2 十二分に誇張されまくってるリーゼントとペンギンブーツは普通の風景・普通の人々中でこそ異化され可笑しみが生じるのに家族全員がそうだと如何にも安すぎてベタな笑いに成り下がる。これ見よがしなのだ。短いのであざ…

春琴抄 お琴と佐助

★★★ 2001年5月6 日(月) テアトル梅田1 サディスティック&マゾヒスティックが究極の純愛に…。その世界に惹かれるものは感じないが田中絹代と高田浩吉はタイプキャストとしてこれ以上の適役は無いと言っていい位のはまり方。三味線と琴に乗せた編集はダイナ…

鬼が来た!

★★★ 2002年5月15日(水) シネヌーヴォ 右か左かを明確にする必要はないが、こうも未整理に成り行き任せの丸投げを見せられても感銘を呼べないと思う。初期設定の帳尻を合わせられず混沌に逃げたような感じ。ラストはポランスキーが既にやっている。(cinemasca…

大阪極道戦争 しのいだれ

★★★★ 2002年6月4(火) ホクテンザ1 『ナニワ金融道』的経済ヤクザのコンゲームは今となっては陳腐だが、主役3人の生き方は正味真っ正直で迷いが無く気持ちいい。特に仁藤優子が素晴らしく役所との絡みでは長廻しに耐え多面的な女心の表出を演じ切って出色。…

黄金の七人

★★★★ 1994年9月25日(日) 扇町ミュージアムスクエア 安全な高所から美女を侍らせ高見の見物で指令を送る教授。人生こうあらねばと少年時代に思ったか思わなかったか知らんが、そうなってないのは事実。メカニカルな装置美術とポップな色調の撮影と過剰な音楽…

大阪物語

★★★★★ 2002年7月8日(月) トビタ東映 滅び行く親の世代と脱皮しながら育ち行く子の世代の対比は在り来たりかも知れぬが驚くべきバランス感覚の良さで、どちらの描写も全く過不足無い。日常に芸人が介在する浪花の世界に組み込まれた親子が全くあざとくないの…

男はつらいよ 知床慕情

★★★★ 1993年1月31日(日) 日劇会館 当書きされたと思しき三船が有りそうで実は映画で余り見ない日本親父のスタンダードを体現して絶妙。そう来れば寅が後景に退くのも戦略的にも納得できるが、常連竹下のマドンナ起用が奥ゆかしく後景感を払拭しているのも良…