男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【と】

フェリーニの道化師

★★★★ 1977年12月11日(日) 元映 1980年5月11日(日) SABホール 少年時代の回想は『アマルコルド』へ、監督自身が登場するフェイクドキュは『ローマ』へと伸延されて結実する。幼少時の記憶の中の残像は得てして主観に装飾された虚像なのだ。これは老いて消…

TOO YOUNG TOO DIE! 若くして死ぬ

★★★★ 2016年7月10日(日) MOVIXあまがさき7 さして感心も出来ぬ狂騒でいっそ主役2人をヨッちゃん・ROLLYとでも総とっ替えでもすりゃよっぽど地獄らしい。が、男が彼女に対してしたこと・しなかったことへの悔恨が無限連鎖するロマンティシズムはゴン…

ドント・ブリーズ

★★★★ 2016年12月24日(土) 大阪ステーションシティシネマ10 ジャンルムービーとして文句なく良作と言える。 何より往々にして陥りがちな超常やサイコの陥穽に落ちないのが良い。 全篇、爺さんは元軍人の盲目の男ならこうするという行動しかとらない。そこが…

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

★★★★ 2016年8月17日(水)大阪ステーションシティシネマ7 主義・主張を貫くにはそれを担保する生活力が要るのだということを、持たざる多くの人々を点描しつつ語る。であるから一旦叩きのめされた後、ジャンクムービー職人として再生する過程こそが白眉。女…

Tommy トミー

★★ 1976年8月29日(日) 元映 ザ・フーの曲は好きだが、今で言う引きこもり青年の他力本願な救済願望には辟易する。主人公が、たらい回しに回される各ロックスターに余りオーラが感じられない。演出的にもエルトン・ジョンのシーンのみが突出。(cinemascape)…

ドラゴン怒りの鉄拳

★★★ 1975年3月23日(日) 伊丹グリーン劇場 狂気へ至る男の稚戯めいた変装コスプレと純愛キスが切ない。終盤までは何がどうと言うこともないが、いざ事が始まればオーラに被われた伝説が顕現する。ヌンチャクと回し蹴りのの100年級の耐度。殺陣に関していえ…

ドラゴン危機一発

★★ 1974年11月3日(日) 伊丹グリーン劇場 蹴られて人型の形で壁を突き破っていくさまがギャグではないらしいのが意気消沈させる。全てが安くせこくテキトー。ブルース・リーに後の作品のような抜き差し成らない悲壮感が無く素材に徹して凡庸だ。可愛いだのな…

チャップリンの独裁者

★★★★ 1973年11月24日(土) 新聞会館大劇場 独裁者パートは時間に追われる設定がスピード感を煽りギャグ積載量も豊富で澱むところ無くチャップリンの潜在悪意が垣間見える際どさ。その分そう悪くもない床屋パートが凡庸に見えてしまうが、恒久平和をベタベタに…

ドミノ

★★★ 2023年10月30日(月) MOVIXあまがさき11 能力者と組織の戦いを描いたローバジェット・90分の映画ってことで、80年台のデ・パルマやクローネンバーグなどの作品を想起させるのだが、いかんせん見飽き聞き飽きの設定鶴瓶うちで新たな刺激もあ…

ときめきに死す

★★★ 2023年9月15日(金) シネヌーヴォ 見逃していてずーっと見たかった作品だが、やはり40年も経ってしまうと鮮度落ちは拭いがたかった。 【以下ネタバレです】 暗殺者の話で、決行までの時間を描いている。殊更に準備するでもなく、ダラダラとした時間が…

ドラキュラ デメテル号最期の航海

★★★ 2023年9月11日(月) 大阪ステーションシティシネマ6 証文の出し遅れみたいな今更のドラキュラに食指は動かなかったのだが、監督が「ジェーン・ドゥの解剖」の人だと知って見る気になった。力量のある人だと思うし、本作でも画力の強さは随所で見られま…

どん底

★★★★ 2023年5月31日(水) シネヌーヴォ ゴーリキーの原作戯曲を読んだことないし、演劇を見たこともない。ただ黒澤の映画は見たことがある。それとこれとでは、ずいぶん印象が違うもんだと思った。 おそらく黒澤版の方がオリジナルのテイストを踏襲してるの…

007/トゥモロー・ネバー・ダイ

★★★★ 1998年4月21日(火) 梅田スカラ座 展開が速すぎてタメがないことは今更言うまい。驚いたのはミシェール・ヨーに対するブロスナンがそこはかとなく共闘関係の男女の機微さえ醸し出した点。又ギリアム風味のジョナサン・プライスもナイスで3者が拮抗して…

ドーベルマン

★★★ 1998年4月27日(月) 梅田ガーデンシネマ1 過剰でフリークなワイルドバンチ。導入の襲撃シークェンスは空間処理の不均衡も相まって期待も高まる。抗するカリョの狂気も必要充分であった。しかし、そこまで。過剰に突き抜けることもロマンティシズムに反転…

トレインスポッティング

★★★ 1998年6月6日(土) 第七藝術劇場 怒れる若者たちの末裔は社会構造圧力から解放された代わりに経済格差に圧殺される。かくして私達はドラッグに浸るのであーる。という言い訳地獄から這い上がったにしても世界が閉じていることは変わらない。幻覚描写をは…

突貫小僧

★★★ 1998年10月24日(土) 動物園前シネフェスタ2 映画表現として殊更何かがあるわけではない。ただ、天衣無縫なツッコミを連発する突貫小僧と阿吽の呼吸で受ける斎藤達雄が居ればいい。カメラ脇の小津が眺めた1幕ものの漫才劇が数年後の世紀の傑作へ昇華す…

TOKYO EYES

★★★ 1999年4月3日(土) 第七藝術劇場 どういう訳か世紀末に復刻された70年代ATGアートフィルムの匂い。なので感情の不整合は感性で補ってチョーってな具合の良い塩梅での適当と風景の異郷性が懐旧感を煽る。吉川ひなのの天然なカリスマ性も緑魔子的フシ…

東京夜曲

★★★★ 1999年2月13日(土) 動物園前シネフェスタ3 いきなり故郷に帰ってきた男に慌てふためく旧知の人々。設定も如何にもで、市川の技巧は鼻につく寸前までワンパターン化してきたが、仏頂面の寅次郎を長塚京三が好演。しかし、成功の要因は耐えて受け身に徹…

トゥルーマン・ショー

★★ 1999年1月23日(土) ホクテンザ2 アイデアの起源は悪かろう筈もないのだが、屋上屋を重ね二重底の下に隠し部屋を作る時代に50年代的ヒューマニズムなアプローチに感じた錯誤は愚昧で蒙昧に思える。フィンチャー的深遠な悪意の不在が決定的なのだ。(cine…

Dr.コトー診療所

★★★ 2023年1月15日(日) MOVIXあまがさき5 TVシリーズは全く見たことないし、原作漫画も読んだことない。なんで見に行ったかと言うとカミさんが見たいと言ったからだ。ドラマを見てたらしい。 そんなんで登場人物たちへの馴染みもないから、最終放…

東京日和

★★ 1998年7月21日(火) パルシネマしんこうえん 演出の過剰な自意識。主演者を筆頭にした各方位への遠慮と忖度。どちらもこの小さな閉じた世界の物語には無用の長物で腹立つ位に不適合。竹中がそうなのは今更仕方無いが中山美穂までが薄幸美を意識しすぎてあ…

どこまでもいこう

★★★ 2000年1月29日(土) 扇町ミュージアムスクエア 少年時代は大抵の事に落とし前をつけられないままに、どんどん時間が過ぎていってしまうもので、リアルと言えばそうなのかも知れぬが、たとえ虚構だと言われるにせよ映画は矢張り落とし前をつけて欲しい。唐…

トイ・ストーリー

★★★★★ 1996年3月23日(土) テアトル徳山Ⅰ 初めてのトーキーや初めてのカラーや初めてのシネラマ等に遭遇した人々の衝撃を夢想した。度肝を抜かれる解像度と抜けの良さ。そして、信頼や団結やチャレンジし続け諦めないという古き良きアメリカ映画の伝統は最早…

トイ・ストーリー2

★★★ 2000年3月28日(火) ワーナーマイカルシネマズ明石7 Part1以上にテクニカル面では巧妙で文句のつけようもないが驚きも無い。どれほど斬新なものでも続篇は規定の範囲内に収まった世界観では収縮感を補えないということ。ハートを打つ真情ってのはも…

どら平太

★★ 2000年5月17日(水) ユナイテッドシネマ岸和田1 我がぶつかり合う四騎の会共同脚本の結果はスパークし損ね凡庸な隠密同心ものにしかならなかった。しかも消費期限の切れたもんを賞味期限切れの市川崑が撮って案の定の出来。黒澤か小林監督で三船・仲代で…

12モンキーズ

★★★★ 1996年6月29日(土) テアトル徳山Ⅰ 時空を2元的に往来する物語が遂には円環を形成する点はさして目新しくもなく感興も覚えない。だが、冒頭からしてブルース・ウィリスの気合いの入り方が常軌を逸しており、その肉体性が如何にもなギリアム的プラスティ…

東海道四谷怪談

★★★ 2000年9月2日(土) みなみ会館 豊穣な土壌で陰惨を描くのではなく新東宝の末期感が漂い心底陰惨な感じがする。間合いの微妙な間延びが中川のアナクロを窺わせ反社会的な隠微さを放つ。そして、終盤の畳み掛けはやり過ぎ。もう少し控え目でも良かった。(ci…

トキワ荘の青春

★★★★ 1996年12月14日(土) 徳山市市民館小ホール 移ろう時代と世界に対峙し不動の軸足として静物の如く立ち続けた男。相当に見え透いたテーマではあるが心を打つのは、実在人物だということ以上に市川の信念に揺さぶられるからなんだろう。もう一方の軸足の手…

逃亡地帯

★★★★ 1995年3月5日(日) パラダイスシネマ 前半のテネシー・ウィリアムス的な停滞し鬱屈した南部の退廃描写が些か古くかったるいのだが、アメリカ映画固有ジャンルである群集心理ものをヘルマンがこれでもかと煽る暴動シークェンスの鮮やかさ。良識代表のブラ…

東京兄妹

★★★ 1995年6月18日(日) 扇町ミュージアムスクエア 黴臭い仕舞た屋で日曜の昼下がりに寝転がりながら冷や奴をつつくなんてのが乙なんですよ、とでも言いたげな押しつけがましさが鼻持ちならないし、展開も見えすぎてあざといんだが、ラストの鮮烈さがちょっと…