男の痰壺

映画の感想中心です

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

海よりもまだ深く

★★★★ 2016年5月24日(火) 梅田ブルグ7シアター3 母息子とか嫁姑といった家族間の感情の機微や軋轢を細緻リアリズムを折に触れ挿入し描くという点に於いて最早名人芸の域に達している。ただ名人芸すぎて観る側のハードルも上がっちまうのだ。本当の痛さや…

ラスト・ショー

★★★★ 1976年5月16日(日) SABホール 1991年10月31日(木) テアトル梅田2 黄昏の田舎町でゆっくりと死んでいく人々。ベトナムは遠く少年達は少年らしく今を受容するだけ。アカデミーのジョンソンとリーチマンも良いが若干の生気を発するエレン・バーステイ…

ハルチカ

★★★★ 2017年3月29日(水) TOHOシネマズ梅田4 身も蓋もない話である。 吹奏楽部を中心になって立ち上げたが、肝心の奏者としての資質に欠ける女の子。 で、一生懸命に努力しましたが…結局ダメでした。 そんだけなのだ。 前半の部員集めの「ちはやふる」2番…

ディストラクション・ベイビーズ

★★★ 2016年5月29日(日) テアトル梅田1 喧嘩上等の少年漫画的成り上がり列伝でないことは了解の上で、あの鮮烈な三浦へのカウンター右フックのあと対戦は劣化する。女への暴力と外国人へのシカトのゲス同士の嬲りあいは良しとしても脇に座った柳楽の目は何…

大統領の陰謀

★★★ 1977年9月11日(日) SABホール そもそも事件そのものが講談的に面白い訳でもない。2枚看板の共闘と老骨の助演陣の滋味とウィリスの光の色と量に対するセンス。これらが後押しして若造記者のスクープ自慢に何がしかの奥床しい切れと深みを付与した。連…

ならず者

★★★ 2017年3月20日(月) プラネットスタジオプラス1 かのスコセッシが「アビエイター」で描いたハワード・ヒューズが当初のハワード・ホークスをクビにして撮り直しを重ねて出来上がったしろものなのだが、いろんな意味でおもしろい。 確かに技法上のバラ…

山河ノスタルジア

★★★★★ 2016年5月21日(土) シネリーブル梅田2 バブルがもたらした軽薄と浅慮もまた過去に流れ死別や生き別れさえも瞬時の追憶と化するだろう。凄まじくシニカルだが堪らなくノスタルジック。親子の絆のようなものが描かれても現実にそれは断ち切られたまま…

ボクサー

★★★ 1977年10月2日(日) トーエイ伊丹 絶妙にクールな因縁関係の師弟を設定し程良い前衛を交えて過不足無い展開を見せるのだが文太のやさぐれ感はともかく天井桟敷による又かの市井の人々が過剰であり、又具志堅等の本物を出してしまったのが否応なく虚構を浮…

3月のライオン 前篇

★★★ 2017年3月19日(日) MOVIXあまがさき7 何を期待して見にいったわけでもないし、案の定というか、何も突出してこない安定の無難。 この監督の映画を「るろうに剣心」→「秘密」→「ミュージアム」と見続けてきたのだが、まあ、永久に御用監督の域を…

デッドプール

★★★★ 2016年6月1日(水) 大阪ステーションシティシネマ1 エロと暴力の品性の枷を外したお茶目な饒舌キャラは『ガーディアンOG』が延伸したよな達成感。序盤の高速道でのアクションは緩急が冴えこりゃどこまで凄げえのかのアドレナリン噴出だが結局尻つぼ…

遠すぎた橋

★★★★ 1977年8月15日(月) 梅田東映パラス 失敗に終わった多面的作戦の、何がどうなっているか判らない混沌が延々と展開し、数多のオールスター達が状況に埋没してしまったかのようなのが皮肉にも極めてリアル。贅を凝らした大物量スペクタクルなのに静的なシ…

キングコング 髑髏島の巨神

★★★★ 2017年3月26日(日) MOVIXあまがさき10 俺は子供のころ怪獣フリークだったので、テレビの「ウルトラマン」は視聴マストな番組だった。 で、シリーズ中でも「怪獣無法地帯」って話が殊更にお気に入りだったのだ。 おわかりいただけるだろうか…こ…

殿、利息でござる

★★★★ 2016年6月8日(水) 梅田ブルグ7シアター6 根からの悪が存在しない世界だが、それでも人は放逐され死にいく。そういう非情を十分に肝に溜めつつ尚、善意や心意気とかの前向きファクターを謳歌しようとの決意が表明されてる。全員がハイトーンで台詞を…

アウトロー

★★★ 1976年12月7日(日) 伊丹グリーン劇場 60年代末にペキンパーにより一旦葬り去られたジャンルをペンとブルックスが復権を試み敗退した翌年に徒花の如く製作されたイーストウッド初期監督作中の最良作。十分な片隅感を横溢させながら引かれ者の小唄的ヘタ…

残酷ドラゴン 血斗竜門の宿

★★★ 2017年3月18日(土) シネヌーヴォ まあ、なんと言うか、武侠映画としての殺陣はもう、まるっきりトホホレベル。 ブルース・リー登場でカンフー映画が世間を席巻する数年前の作品であります。 ワイヤーの始祖とのことだが、そんなんあったんかいなっちゅ…

ハリーとトント

★★★★ 2016年6月11日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 ペット片手に放逐されたハリーは貯えも身寄りもあって嘗ての『ウンベルトD』の爺さんのような悲愴はなく自立の矜持満々。アメリカに国力が溢れてた時代の幻影。ただ、寄席芸人としてカーニーの地…

実録 阿部定

★★★ 1980年10月1日(水) 毎日ホール 出るものが半透明になっても絞り尽くされるという或る意味で地獄を、『コリーダ』がまだしも持っていた時間空間的な延伸感が低予算の為ほとんど無い為に映画として高純度に濃縮されたとも言えるのだろうが矢張りしんどい。…

わたしは、ダニエル・ブレイク

★★★★★ 2017年3月18日(土) シネリーブル梅田1 世界でシステムが崩壊しようとしている。 そのシステムは富の分配のことだと言う向きもある。格差の拡大で歪が出たのだと。 左派の論者はおおむねそういう言い方をする。 たぶん、ケン・ローチもそういう陣営…

ヒメアノ~ル

★★★★ 2016年5月30日(月) TOHOシネマズ梅田2 前代未聞の構成の良し悪しはともかく激辛と大甘挿話の各々が他方の従属物でなく飽くまで魅力的な輝きで屹立しいる点が驚き。濱田・佐津川ペアの恋愛初期の嬉し恥ずかし感が良い。そしてパンティ染みまでの…

ナッシュビル

★★★★ 1977年9月11日(日) SABホール カメオ実名人を虚構に混在させたノンフィクションもどきのフィクションは50人以上の主要人物群の悲喜交々な寸景を一所にぶち込み掻き混ぜ泡立てる。包括的にカオスを狙った編集が成功し祝祭と音楽が形成するグルーヴ…

愛と哀しみの果て

★★★ 2017年3月18日(土) 大阪ステーションシティシネマ8 思い込み女の自己愛にまみれた一代記。 …と切って捨ててもいい話なのだが、まあ、しかし、人のことを言えたもんでもない。 俺たちだって皆、ええかっこしたいし、自分はかわいい。 例えば、スカーレ…

団地

★★★★ 2016年6月11日(土) シネリーブル梅田3 斎藤の腹も見せぬのだから、それもリアクションで処理して暗喩にとどめれば完璧だった。終盤は投げやりな逃げと思える展開だが、夫婦の軽妙な日常の底に沈殿する救い難い屈託が逆算照射されるラストショットの…

大地の子守歌

★★★★ 1977年8月12日(金) 毎日ホール 幼気な少女なのに大の大人をも凌駕する強固な自我。余りに増村的なこのキャラは、このときの原田美枝子の圧倒的な肉体の存在感と目力をもって初めて担保された。快感神経をさえ刺激する直線構造。ワンポイントの梶がまた…

アサシン クリード

★★★ 2017年3月12日(日) MOVIXあまがさき4 もはや、とりたてて、こういうゲームの映画化にどうこう言う気力もない。 設定がバカバカしいことを言っても仕方ない。 …と言いつつ、他の肉体に意識を転送して超人願望を充足させる点に於いて「アバター」…

ドラブル

★★★ 2016年6月11日(土) プラネットスタジオプラス1 息子探しの話がどっかいっちまうよなすべるギャグが身に染むチンタライズムが蔓延しており終盤であーそうやったと思い出すよな体たらくなのだが、それでも70年代スパイ映画の芳香は残滓程度ある。特に…

トリュフォーの 思春期

★★★★ 1977年9月23日(金) 大毎地下劇場 トリュフォーのこういう熟れた散文的語りは有りそで無いところが新たな話法への探求を窺わせシビれる。メインに置かれた少年の憧れや、落ち着く結末は正直ありきたりだが、サイドストーリーのエピソードにシニカル人で…

ANTIPORNO アンチポルノ

★★★ 2017年3月11日(土) シネリーブル梅田3 男が全く出てこないという意味で「リアル鬼ごっこ」と同質の園子温の妄想垂れ流し世界。 こんなんロマンポルノちゃうやん、絡みもないし…だからアンチってか? っていうか、企画段階ではねろよと言いたい。 極…

教授のおかしな妄想殺人

★★★★★ 2016年6月15日(水) 大阪ステーションシティシネマ4 今まで描いてきた「金」を起源とする殺人から動機が「愉悦」の為と純化され映画は内向的に先鋭化する。アレン掌中の若い女子とのあーだこーだの華やぎも2作目エマの絶頂美を得て春爛漫。修羅場と…

誰が為に鐘は鳴る

★★ 1976年3月14日(日) 梅田東映ホール 現地ロケも儘成らずハリボテの山岳地帯で繰り広げられるロマンスに刹那感も背徳感も乏しくて興醒める。又、スペイン内戦に携わるジプシーたちに内在する筈のルサンチマンの欠片も描かれないので、作戦遂行への共感もカ…

サバイバルファミリー

★★★★★ 2017年3月11日(土) TOHOシネマズ梅田10 一行が這う這うの体でたどり着いた大地康雄の農家で数十日ぶりに食べる炊き立てご飯の食事。 目玉焼きと漬物と味噌汁。 このシーンに観客の気持ちを同化させ得るかがポイントだったが…はい、同化しました私…