男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【た】

007/ダイヤモンドは永遠に

★★ 1975年8月10日(日) 伊丹グリーン劇場 荒唐無稽に走りすぎて愛想を尽かされ、レーゼンビー起用で更に愛想を尽かされた後の本作。コネリー復帰したが半端な余裕綽々も侘びしく正にシリーズ斜陽の末後感。カースタントとコケティッシュなジル・セント・ジョ…

太陽

★★★ 2016年5月7日(土) シネリーブル梅田4 四国=北朝鮮と読めば在日の今を暗喩したようにも見られ同化もあり共存もありという今更展開で、又SFの設定とすれば尚更に陳腐。だが、閉塞した地方共同体の煮えきらぬリアリズムが一方で死臭のようなドス黒い…

大統領の陰謀

★★★ 1977年9月11日(日) SABホール そもそも事件そのものが講談的に面白い訳でもない。2枚看板の共闘と老骨の助演陣の滋味とウィリスの光の色と量に対するセンス。これらが後押しして若造記者のスクープ自慢に何がしかの奥床しい切れと深みを付与した。連…

団地

★★★★ 2016年6月11日(土) シネリーブル梅田3 斎藤の腹も見せぬのだから、それもリアクションで処理して暗喩にとどめれば完璧だった。終盤は投げやりな逃げと思える展開だが、夫婦の軽妙な日常の底に沈殿する救い難い屈託が逆算照射されるラストショットの…

大地の子守歌

★★★★ 1977年8月12日(金) 毎日ホール 幼気な少女なのに大の大人をも凌駕する強固な自我。余りに増村的なこのキャラは、このときの原田美枝子の圧倒的な肉体の存在感と目力をもって初めて担保された。快感神経をさえ刺激する直線構造。ワンポイントの梶がまた…

誰が為に鐘は鳴る

★★ 1976年3月14日(日) 梅田東映ホール 現地ロケも儘成らずハリボテの山岳地帯で繰り広げられるロマンスに刹那感も背徳感も乏しくて興醒める。又、スペイン内戦に携わるジプシーたちに内在する筈のルサンチマンの欠片も描かれないので、作戦遂行への共感もカ…

辰巳

★★★★ 2024年4月27日(土) テアトル梅田4 暴対法の施行下で衰退する暴力団を背景に、それらを題材にした映画は2000年以降滅多に作られなくなり、かつての任侠→実録→Vシネと隆盛を極めたヤクザ映画は半ば死滅したといっていいだろう。代わって半グレ集…

第三の男

★★★★★ 1976年9月12日(日) 三番街シネマ2 手法は模倣され尽くしたとしても時代は模倣できない。4ヶ国が統治し中世と近代がシンクロする敗戦国を舞台に持ってきた刹那感と情緒。ウェルズ・クラスカー・カラスと3枚揃った伝説。どう足掻いたって再現不可能な…

大地震

★★★ 1975年1月6日(日) OS劇場 サバイブするドラマにまでは仕切れず翻弄されるのみの群像劇であるが、主役ヘストンが無為な抗災キャラに徹し切れないのがどうしたって弱い。白昼の災厄を描くハリウッド版ミニチュア特撮は正直、東宝版を凌駕する出来でガセ…

だれかの木琴

★★★★ 2016年9月12日(月) 大阪ステーションシティシネマ6 東としては80年代川上皓市と組んだ女を描いた一連作のテイスト復刻にも見えつつ主張しない女優を据えての奇矯話に周回した老成も感じる。平日の午睡のような平穏に包まれ偏執行為にのめりこむ主…

大砂塵

★★★ 2016年10月9日(日) プラネットスタジオプラスワン 四角関係のようなものを描いてるのだが妖怪化する直前の女2人に色気もクソもなく全然そそらない。男勝りの鉄火肌にも成り切れぬので野郎どもは唐変木の烏合の衆と化する。山間でやたら爆発が起こった…

007/死ぬのは奴らだ

★★★ 1975年8月10日(日) 伊丹グリーン劇場 それ以前も大概大味になってきてはいたのだがロジャー・ムーアをボンドに選択した時点でシリーズは「秘密情報部員」と言う語感が持つ60年代的冷戦下の世界観から断ち切られた。Mやマネペニーとの対面が楽屋落ち的…

太陽がいっぱい

★★★ 1976年9月12日(日) 三番街シネマ2 虐げられた末の反逆なのであるから感情移入できそうなものだし、映画は技巧を尽くしてドロンに片寄せもする。実際ドカエのカメラが捉える瑞々しい心の揺らぎは海上や市場のシーンでスパークしてる。だが、奥底に横たわ…

太平洋の嵐

★★★ 2024年1月11日(木) シネヌーヴォ 「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦」なる副題が各データベースでは付いてますが本篇タイトルにはそんなもんありません。宣材段階でつけられたもんだろう。そういうのん結構拘る人間なんです。 見飽きた太平洋戦争序盤史…

ダゲレオタイプの女

★★★★ 2016年11月5日(土) シネリーブル梅田4 黒沢清はシネフィル系の小賢しさが邪魔して本質的には好きになれない作家だったが、前作「クリーピー」から、突然何かが変わったようだ。 加齢による内面の成熟なのだろう、多分。…と適当なことを言ってみるの…

大脱走

★★★★ 19774年2月24日(水) 阪急文化 ビッグXの英式階級統治が相容れぬヒルツ米流個人主義と職能集団の共同作業の中で幸福な融和を成す前半も良いが、やはり後半に一転する娑婆の空気の開放感。ヒリつく緊張が漲る中を独立独歩のマックイーンに豪快に突っ走…

第十一号監房の暴動

★★★★ 2023年7月17日(月) プラネットプラスワン ドン・シーゲルの初期作品だが、当然の如くに低予算なのでセットなんか組めずに実際の刑務所でロケしている。囚人たちもエキストラで出ているようだ(タイトルロールで刑務所と囚人への謝意が出ます。) その…

探偵マリコの生涯で一番悲惨な日

★★ 2023年7月6日(木) シネリーブル梅田1 どこが腕利きの探偵やねん?と思いました。探偵としての仕事は写真持って「この人見たことありませんか」と聞いて回るシーンくらいで、他にはなーんもありません。 伊藤沙莉が好きなんで見たけど、予告篇見てる時…

ゴダールの探偵

★★★ 2023年7月13日(木) シネヌーヴォ 探偵つーても、ゴダールですからその手のジャンル映画の醍醐味があるわけもない。冒頭、向かいのアパートからホテルの入り口を盗撮するシーンでまさかと思ったが、見事に空振りだった。 ホテルを舞台に4組の男と女が…

TAR ター

★★★★ 2023年5月17日(水) TOHOシネマズ梅田5 ケイト・ブランシェットがイケイケのパーフェクト女からズタボロに堕ちるという点で「ブルージャスミン」を、日常がパラノイアな神経症的妄想に侵食される点で「反撥」を思わせるが、トッド・フィールドの…

対峙

★★★★★ 2023年2月18日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 又もやのコロンバインの事件がモチーフかと思ったら、パークランドの事件だと。似たような事件が繰り返されてるんですね。 設定も、それ程までには意外性のあるものでもない。ディスカッションド…

007/トゥモロー・ネバー・ダイ

★★★★ 1998年4月21日(火) 梅田スカラ座 展開が速すぎてタメがないことは今更言うまい。驚いたのはミシェール・ヨーに対するブロスナンがそこはかとなく共闘関係の男女の機微さえ醸し出した点。又ギリアム風味のジョナサン・プライスもナイスで3者が拮抗して…

太陽の少年

★★★ 1998年6月13日(土) ホクテンザ2 良く出来た年代記もので且つ少年時代の話というのは王道的売れ線要素だが、一方で余りに多くの作品があるので余程オリジナリティが無いと埋没する。年寄りと子供しかいない空虚な街という設定を活かしきれていない。(cin…

タイタニック

★★★★ 1998年1月14日(木) テアトル徳山Ⅲ ハイ&ローの呉越同舟をヴィスコンティ級の重厚さで描くことができれば密閉空間の悲喜交々も荘厳なものにもなったろうがハーレクイーンにライト。そして、訪れる悲劇もテーマパークのアトラクションのように期待値の最…

卓球温泉

★★★ 1998年7月11日(土) ホクテンザ1 温泉の卓球という如何にもな設定をしながら、確信的に周防映画のエピゴーネンたらんとする2重の過ちを犯したが、辛うじて中年太りの松坂の二の腕の世捨て人たらんとするかの如き迫力に救われた。(cinemascape)

大恋愛

★★★ 2023年2月9日(木) シネリーブル梅田2 ピエール・エテックスという人のことは知りませんでしたが、フィルモグラフィを見ると、ジャック・タチの助監督からスタートして、自身の作品を撮る一方、多くの監督の作品に客演している。ブレッソン、ルイ・マ…

丹下左膳餘話 百萬両の壺

★★★★★ 1998年12月23日(水) 第七藝術劇場 大河内の殺陣に潜む狂気な殺気と喜代三の骨身から滲む玄人臭。「日々平安」なプロットは本物イズムに担保され瞬時も緊張は途切れない。パロディに臨んで諧謔の中に鋭利を差し込む山中イズムの後世への波及。マスター…

パトリス・ルコントの 大喝采

★★★★ 1997年1月24日(金) 徳山市市民館小ホール いい加減と紙一重の肩ひじ張らないフットワークと一作毎に簡易にテーマを変える変幻自在さ。洒脱を心得たルコントをアレンと比肩させるのは的を得てるだろう。老優たちが見せるアホ演技のコンビネーションの絶…

ダンテズ・ピーク

★★★ 1997年3月9日(日) テアトル徳山Ⅱ 火山噴火の描写を溶岩とか火山弾ではなく火砕流中心に描いたビジュアルが新鮮で粉塵に街が飲まれるシーンだけでも見る価値はある。物語が余りに在り来たり且つ局所的すぎてスケールを貶めてしまったが、自然災厄映画とし…

太陽に灼かれて

★★★★★ 1996年1月27日(土) 徳山市市民館小ホール ミハルコフが親和するチェーホフ的世界に切り込まれるタルコフスキー的前衛は故国近代史への錯綜する想いを表出し、ソビエト映画史を概観するような感銘。ズーム使いは後期フェリーニ・ブニュエルを想起させる…